おやぢの部屋2
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XENAKIS/Alax, BEETHOVEN/Violin Concerto
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Thomas Zehetmair(Vn)
Ernest Bour/
Ensemble Modern
Gruppe Neue Musik >Hanns Eisler<
Ensemble Köln
ENSEMBLE MODERN/EMCD-017




エルネスト・ブールと言えば、前世紀中ごろの「現代音楽」シーンには欠かせない指揮者でした。夏にも欠かせません(それは「プール」)。例えば、キューブリックの「2001年」のサウンドトラックに使われたリゲティの「アトモスフェール」の音源は、ブール指揮、南西ドイツ放送交響楽団によるWERGO盤でした(これが、初録音。初演は、ハンス・ロスバウト指揮のSWF交響楽団)。クセナキスなどもよく演奏していたはずですが、調べてみると初演を行ったのは、この「Alax」だけでした。
これは、クセナキスの1985年の作品、今まで名前すらも聞いたことはありませんでしたが、Salabertのカタログの中のディスコグラフィーにも載っていなかったので、もしかしたら今まで録音が世に出ることはなかったのかもしれません。おそらくこの1985年9月15日にこの作品が初演された時のライブ録音(放送音源)が、唯一のCDなのでしょう。
ブールの指揮ではあっても、この作品は普通のオーケストラのための編成ではありませんでした。タイトルには「3つのアンサンブルに別れた30人の演奏者のための」というコメントがあるように、かなりの小編成、正確には、フルート1、クラリネット1、ホルン2、トロンボーン1、ハープ1、打楽器1、ヴァイオリン1、チェロ2という10人編成のアンサンブルが3つ集まったものになっています。その「3つ」のアンサンブルのうちの一つがアンサンブル・モデルンだったことから、こんな貴重な録音が彼らのレーベルからリリースされることになったのでしょう。その時に共演していたライプツィヒ(当時は東ドイツ)のグルッペ・ノイエ・ムジーク・ハンス・アイスラーと、ケルンのアンサンブル・ケルンは、今はもう活動していません。
いきなりヴァイオリンの、まるでかきむしるような高音の応酬で始まるこの曲は、最初はまず弦楽器だけで演奏されます。初期の作品のような混沌ではなく、もっと透明感のあるポリフォニーが、ここからは聴こえてはこないでしょうか。なおかつ、そこには「メロディ」すら垣間見られます。そこに金管楽器や打楽器が入ると、情景は全く変わって、いつもの喧騒がやってきます。と、一瞬の静寂の中から3台のハープだけで奏でられるとても美しい瞬間が現れます。それはまるで武満のような、澄み切った世界です。そんな、様々な場面転換を味わいつつ、この頃のすっかり無駄な力が抜けたクセナキスの音楽を堪能してみたらいかがでしょうか。
カップリングが、ツェートマイヤーをソリストに迎えてのベートーヴェン(!)のヴァイオリン協奏曲です。ブールがこういうレパートリーを指揮するのも珍しかったことでしょうし、何よりも、「モデルン」という名前のアンサンブルが「クラシック」時代の曲を演奏するのですから、これは楽しみです。
これは、クセナキスの2年後に行われたコンサートのライブですが、CDで続けて聴いてみると、クセナキスから全く違和感なくベートーヴェンに突入していたのには、驚いてしまいました。ものすごいテンポ設定のせいもありますが、冒頭のティンパニがそもそも「モデルン」な叩き方ですし、続くオーボエもとことん攻撃的な吹き方なものですから。と同時に、これは今のピリオド楽器系の演奏家にも通じるようなところも感じられます。「ピリオド」の人たちのやろうとしていることは、実は「モデルン」だったのかもしれません。
ツェートマイヤーも、このテンポで大奮闘、もしかしたら、それこそ「ピリオド」風に装飾も入れていたのではないでしょうか。そしてカデンツァは、ベートーヴェンがこの曲をピアノ用に直した時に作った「自作」のものを、ヴァイオリンで演奏していましたよ。これも素敵。

CD Artwork © Ensemble Modern Medien
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by jurassic_oyaji | 2012-06-22 20:24 | 現代音楽 | Comments(0)