おやぢの部屋2
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Alois Unerhört
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Alois Mühlbacher(Sop)
Franz Farnberger(Pf)
PREISER/PR 91185




タイトルは「前代未聞のアロイス」でしょうか。このCDを作った人は、アロイス・ミュールバッヒャーくんというボーイ・ソプラノがあまりに素晴らしいので、そんな、ちょっと大げさなコピーで煽ってみようと思ったのでしょう。
アロイスくんは1995年の生まれ。2005年に、あのアントン・ブルックナーも団員だったことのあるリンツのザンクト・フローリアン少年合唱団に入団しました。それ以来、合唱団員としての演奏会や演奏旅行のほかにも、アロイスくんは数多くのステージに立っています。バーンスタインの「ミサ」のソリストも歌っているそうですし、オペラにも出演しています。モーツァルト「魔笛」に出てくる少年は定番で、ルネ・ヤーコブスとのプロダクションはこちらのCDにもなっています。さらに日本でも、2010年5月に行われたアルミンク指揮の新日本フィルのホール・オペラ「ペレアスとメリザンド」では、イニョルド(子役)を演じていたそうです。
まあ、そんな予備知識があったとしても、所詮ボーイ・ソプラノですから(さっきの「魔笛」のCDなどは、典型的な「少年の声」でしたし)、こんだけの、「大人の」ソプラノでもちょっと尻込みしそうなレパートリーを歌わせるというのは、ある種見世物的な興味を引くだけのものでしかないだろう、と思っていました。ところが、1曲目の「魔笛」の夜の女王の有名なアリアの歌いだしたとたん、その声には心底びっくりしてしまいましたよ。これは、まぎれもない「ソプラノ」ではありませんか。「ショ~シュ~リキ~」のミゲルくんも、最初聴いた時にはその「少年ばなれ」した声には驚いたものですが、こちらはその上を行く成熟した「オトナ」の声なのですからね。それで、あのとんでもないコロラトゥーラを歌うのですから、ほんとに信じられない思いです。最高音の「ハイF」も難なくクリアですよ。
それに続くのが、同じ「魔笛」からの、今度はパミーナのアリアです。同じソプラノでも全く正反対の性格を持つアリアを、こちらはしっとりと、そして夜の女王とは別の意味の難しさのあるコロラトゥーラも見事に聴かせるのですから、もう感服です。普通、夜の女王とパミーナを同時に歌うソプラノなんて、いませんよね。
もう一組、あり得ないような2つの役を同時に歌っているのが、シュトラウスの「こうもり」です。ここではなんと、アデーレとロザリンデを両方とも歌いきっています。つまり、「小間使い」と「男爵夫人」を見事に表情豊かに歌い分けているのですからすごいですね。
そして、なんと言っても驚かされるのが、もう一人のシュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」からのツェルビネッタのレシタティーヴォとアリア「偉大な王女様」です。この、難易度から言ったら間違いなく上位にランクされるに違いない、超絶技巧満載の長大なナンバー、軽々しく手を出して痛い目にあった歌手は数知れずという難曲を、アロイスくんは楽々とその12分間を楽しんでいるのですからね。
ちょっとした歌い始めのクセや、ピッチの不安定なところは気になりますが、もっとひどくても堂々と「ソプラノ」のソリストとして活躍している人もいるのですから、そんなことは何の問題にもなりません。
ただ、このCDが録音されたのは2009年ですから、その時の彼は14歳ぐらい、おそらく、変声期ギリギリのところだったのでしょうね。でも、なんだかこのまま声が変わらないで、そのまま大きくなってしまいそうな感じもしませんか。たまにそういう人がいますよね。小田和正とか。そうだとすれば、アロイスくんは、あの大人の男の力強さで、女声の音域を歌うという「カストラート」になれてしまうのではないでしょうか。これからの動向が気になるところです(他人がどうこう言うことではないのでしょうが)。オーケストラの伴奏でも、聴いてみたいですね。

CD Artwork © St. Florianer Sängerknaben
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by jurassic_oyaji | 2012-06-24 21:28 | オペラ | Comments(0)