おやぢの部屋2
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BACH/Mass in B minor
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Felicity Lott, Anne Sofie von Otter(Sop)
Hans Peter Blochwitz(Ten)
Willian Shimell, Gwynne Howell(Bas)
Georg Solti/
Chicago Symphony Chorus & Orchestra
DECCA/478 3931




DECCAのミドル・プライス「ダブル・デッカ」という最新のシリーズにショルティが指揮をした「ロ短調」がありました。ショルティのバッハなんてあったのでっか?というぐらいのミスマッチですが、確かに、調べてみたらショルティのバッハの録音で現在DECCAから流通されているものはこれしかありませんでした。これは1990年の録音ですが、なんでも1987年には「マタイ」も録音していて、それがショルティにとっては最初のバッハだというのですね。これなどは、今ではタワーレコードの復刻版でなければ手に入りません。最晩年になって初めてバッハに挑戦したというのは、いったいどのような心境からだったのでしょう。
ここでショルティがバッハに対して取ったスタンスは、当然ながらモダン楽器によるシンフォニー・オーケストラの機能を最大限に発揮させる、というものでした。言いかえれば、ベートーヴェンからマーラーまでと「発展」を遂げてきたとされる西洋音楽の原点としてバッハをとらえるという姿勢でしょうか。バッハを「音楽の父」と崇め、すべての音楽はバッハから始まったとする史観は、前世紀の終わりごろでもまだ健在でした。
そのような演奏様式を否定するものでは決してありません。それどころか、バッハがシカゴ交響楽団のような、ヴィルトゥオーゾ・オーケストラによって演奏された時には、予想もしなかったような美しさが現れることを発見して、少し驚いているところです。それが最もよく体験できるのが、ウーヴェ・ヴォルフの校訂による新しい「新バッハ全集」によれば「22番」となる、「Agnus Dei」ではないでしょうか。というのも、ここのトゥッティのヴァイオリンで演奏されるオブリガートは、最初に聴いたリヒターの日本公演でのものがあまりにひどかったために、なにかトラウマのようになっているのですね。事実、それからこの曲を聴く時には、常に何かしっくりいかないものを感じ続けることになるのです。ユニゾンで弾いているだけなのに、それがぴったりと合って気持ちの良いピッチに聴こえることはまずないのですね。
それが、ここでのシカゴ響のヴァイオリン・セクションは、まさに一糸乱れぬ正確なピッチで、演奏してくれています。しかも、その豊穣さあふれる響きは、スタンレイ・グッドール、サイモン・イードンといった、DECCAサウンドの最後を飾ったエンジニアたちの手によって見事なまでの輝きを誇っていました。そんなブリリアントなオケをバックに、フォン・オッターも渾身のアリアを聴かせてくれます。それは、あまりにストイックに走り過ぎた最近のバッハ演奏を聴き慣れた耳には、なんと新鮮に感じられることでしょう。
オーケストラのソリストたちの名演も、光ります。中でも、録音当時はすでに60歳を超えていたはずのドナルド・ペックのフルートの輝かしさはまさに絶品です。「新」新全集の「7a/Domine Deus」でその存在感に気づいてしまうと、もうフルートの音色にはくぎ付けになってしまいます。その次の「7b/Qui tollis」では合唱に2本のフルートの十六分音符の掛け合いがからみますが、2番フルートとの音色の違いは歴然としています。もちろん、「20/Benedictus」での大ソロは完璧です。
さらには、レイ・スティルのオーボエ・ダモーレと、デイル・クレヴェンジャーのホルンでしょうか。そこには、決してピリオド楽器では味わうことが出来ない「ぜいたくさ」が満ちています。
しかし、合唱に関しては完全に失望です。確かに、この頃まではオーケストラの合唱はかなりいい加減、ベートーヴェンの「第9」でちゃんと歌っている合唱団なんかありませんでしたが、バッハでそれをやられてしまってはちょっと困ります。そんなひどい合唱団が、メリスマだけはやたら張り切ってスタッカートを効かせるのですから、たまったものではありません。

CD Artwork © Decca Music Group Limited
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by jurassic_oyaji | 2012-06-28 19:57 | 合唱 | Comments(2)
Commented by ななしのごんべい at 2012-06-30 00:04 x
ショルティのマタイ受難曲は知っていますが、ロ短調ミサ曲の録音は知りませんでした。
マタイ受難曲のほうは発売当時かなり話題になったと思います。タワーレコードの復刻版を購入しましたが、残念ながら期待はずれでした。
話題がそれてしまって申し訳ありません。
Commented by jurassic_oyaji at 2012-06-30 09:41
やはり、どんな指揮者でも不得意なものはあるということなのでしょうね。