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BARTÓK/Concerto for Orchestra, Music for Strings, Percussion and Celesta
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Marin Alsop/
Baltimore Symphony Orchestra
NAXOS/8.572486




2007年にマリン・オールソップがボルティモア交響楽団の音楽監督に就任した時には、「アメリカのメジャー・オーケストラでは初の女性音楽監督」と騒がれたそうですね。指揮者に関してはまだまだ「差別」があるのがこの世界なのでしょうか。ボルティモアでは、最初は団員からそっぷを向かれていたそうですし。しかし、すでにシモーネ・ヤングはベルリン・フィルやウィーン・フィルとの共演を果たしていますから、いずれそんなことはなくなるのでしょう。
このCDは、音楽監督就任の翌々年、2009年に録音された「オケコン」と、2010年に録音された「弦チェレ」という、バルトークのオーケストラの作品では人気度ランキング1位と2位の「名曲」がカップリングされています。いつものように、ライブ録音ではなく、丁寧に時間をかけたセッション録音ですから、仕上がりは上々、とても聴きごたえのあるアルバムです。
ここでは、まず、このオーケストラの磨き上げられた極上のサウンドを、極上の録音で楽しむことができます。確か、だいぶ前にはこのレーベルからオールソップのアイテムがSACDとしてリリースされていたはずですし、今でも、ハイレゾ音源のサイトでは、24bit/96kHzのスペックのデータがダウンロードできるようになっています。それだけ自信のある録音が、このアルバムでもふんだんに味わうことができます。
「オケコン」で驚かされるのは、金管楽器の響きの素晴らしさです。もちろん、まずオーケストラ自体の技量が飛びぬけています。この曲では金管の聴かせどころは随所にありますが、そこで決して力むことなく、なんとも自然体の落ち着いた演奏を聴かせてくれているのですね。そして、それをエンジニアは理想的なバランスと音色で録音してくれました。
「弦チェレ」では、管楽器がなくなって人数が少ない分、さらに精緻で生々しい音を聴くことができます。弦楽器の質感の再現はまさに驚異的。そこに、ピアノやチェレスタの、普通はなかなか聴こえてこない「隠し味」が、絶妙に顔を出して、アクセントを与えています。さらに、例えば第3楽章の冒頭で聴こえる打楽器(木片?)のリアリティと言ったら。
そうなってくると、CDでこれだけのものを味わえるのなら、元の録音はどれだけすごいのか、ということが気になってしまいます。おそらくそれは、アナログ録音をもしのぐほどの素晴らしいものに違いありません。SACDなら、間違いなくそれを体験できるはずなのに、なぜ、このレーベルはそれをやめてしまったのでしょう。
それどころか、いまここが熱心に推し進めているのは、そのような「フィジカル」な媒体ではなく、インターネットのストリーミングによる配信です。Naxos Music Libraryというそのサイトには、ごく最近、EratoTeldecといったWarner系のレーベルがレパートリーに加わったそうで、音源のラインナップは格段に充実したかに見えますが、その「音」はひどいものです。このアルバムもすでにライブラリーに入っているので聴き比べてみましたが、弦楽器は人数が半分に減ってしまったかのような薄っぺらな音になっていますし、決定的なのがさっきの「木片」の音です。CDでは音の輪郭がくっきりと浮き上がっていたものが、NMLでは芯がなくなってバラバラに崩壊しています。そもそも128kbpsAACというスペックですから、それは当たり前の話なのですがね。
ところで、このCDには思いがけない落とし穴がありました。「弦チェレ」の第3楽章(トラック8)のタイムコード5m06sあたりで音をつないだことがはっきり分かるのですね。まあ、それは単なる編集のテクニックの問題ですが、そんな風に実際に「つないだ」ところを体験してしまうと、この演奏全体がつぎはぎの産物のように思えて、ちょっとつまらなさを感じてしまうのですよ。高揚感のようなものも、なんだかあらかじめセットしてあって嘘くさく聴こえる、とか。

CD Artwork © Naxos Rights International Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2012-07-06 19:38 | オーケストラ | Comments(0)