おやぢの部屋2
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UEDA/Requiem ・ Never forget the day and you
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本宮廉子, 北爪かおり(Sop), 横町あゆみ(Alt)
坂口寿一(Ten), 熊谷隆彦(Bas)
上田益/
The Kühn Choir of Prague
Prague Philharmonia
REQUIEM PROJECT/SVRP1201




「レクイエム・プロジェクト」というものがあることを、最近知りました。老人会ではありませんよ(それは、「レクリエーション・プロジェクト」)。なんでも、2010年に阪神・淡路大地震から15年目を迎えることから、それに向けて、数多くのテレビドラマの音楽などで知られる作曲家、上田益(すすむ)さんが中心になって2008年から始まった活動なのだそうです。そのために上田さんによって作られたのが、この、「自然災害、戦争、テロなどで亡くなった多くの尊い命のためのレクイエム~あの日を、あなたを忘れない~」なのだそうです。
図らずも、2011年に起こってしまった大震災によって、この活動はさらに大きな広がりを持つようになります。ついこの前の3月には、福島でこの「レクイエム」を演奏するとともに、福島県在住の今を時めく震災詩人、和合亮一さんの詩をテキストにした上田さんの新作合唱曲も演奏される機会がありました。そのように、単に「レクイエム」を演奏するだけではなく、その土地で新たな創作を行ったり、制作の段階から地元のスタッフとの触れ合いを大切にするというのが、このプロジェクトの特徴なのだそうです。今の時点では、2015年に東京でオペラ仕立ての「レクイエム」を上演する計画までが明らかになっています。そのような活動が、明るい未来を作っていくことにつながれば、これほど素晴らしいことはありません。
さらに、このプロジェクトは、日本国内を飛び出して外国にも活動の場を広げています。今年の4月1日には、チェコのプラハで東日本大震災追悼のための「チャリティ・コンサート」が開かれ、その最後に「レクイエム」が演奏されました。会場はあの「ドヴォルジャーク・ホール」、5人のソリストは日本から参加、オーケストラはプラハ・フィル、合唱はキューン合唱団です。前プロのバッハの「アリア」や、モーツァルトの「交響曲第40番」は、チェコのピルゼン放送交響楽団の音楽監督、川本貢司さんが指揮をして、メインの「レクイエム」は上田さんが指揮をする、という構成でした。
この演奏会の写真が、キューン合唱団のサイトに掲載されていますが、合唱団の最前列には日本人とおぼしきメンバーの顔があります。日本でこの曲を歌ってきた合唱団の人までも、この演奏会に参加するためにプラハまで行っていたのですね。
そして、この演奏会の前日と前々日に、プラハのスタジオで行われたのが、このCDのためのレコーディングでした。コンサートのライブではなく、しっかりセッションで録音したというのは、単なるイベントの記録ではなく、作品としてより完成度の高いものを残したかったからなのでしょうか。
この「レクイエム」は、一見普通のテキストで作られているように感じられますが、実はラテン語の歌詞の中になんだか初めて見るような言葉があります。それもそのはず、全部で10曲から成る作品の中の4曲は、上田さん自身が作った日本語の歌詞をラテン語に翻訳したものだったのです。例えば「夢をあきらめないでほしい」といったような、それこそ和合さんのようなクサいテキストも、「Ut speciem non relinquere」とラテン語で歌われると、なんだか本物の「レクイエム」みたいに聴こえるから不思議です。ただ、その音楽は、suspended 4の経過和音を多用した、まさにどんなテレビドラマの中でも垂れ流されている甘ったるいものであるのは、作曲家の資質の問題ですから、致し方のないことなのでしょう。でもご安心ください。自分で作れないものはどこかよそから借りてきて、「レクイエム」らしさを強調する配慮に、怠りはありません。そのために「Lacrimosa」で動員されたモーツァルトや伝カッチーニにとってはいい迷惑でしょうが。
いえいえ、しっかり、「聴くためのレクイエムではない」と開き直っているのですから、その志はくんであげないと。

CD Artwork © Requiem Project
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by jurassic_oyaji | 2012-07-16 20:15 | 合唱 | Comments(0)