おやぢの部屋2
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仙台フィル・山響の「復活」
 この間、チケットを買いに行った時に外側からだけ見ていた県民会館に、きのう、やっと演奏会を聴きに行くことが出来ました。なぜか、なかなか改修工事が始まらなくて、やっと最近完全復旧したのですよね。なにしろ、ニューフィルでも11月に使うことになっていて、以前ははたしてそれまでに工事が終わっているのかどうかとやきもきしていたものですが、まるで何事もなかったように、そのホールは開いていましたよ。中に入った感じは、震災前と全く変わらないようでした。市民会館などはホール内の壁を全部新しいものに貼り替えたりしていましたが、ここではそんなことはなかったのでしょうか。あるいは、全く同じ素材を使って「復元」したとか。
 私の席は2階の一番前でした。本当にしばらくぶりだったので、階段を上ってもどこの扉から入るのか、分からない感じになっていましたね。ここから行けるはずだ、と思って開けたら、テレビカメラにふさがれて目的地まではいけませんでしたし。そうなのですよ。このコンサートはNHKが録画を行っていて、いずれ(9月30日朝6時~)BSで放送されるのだそうです。
 席に行く前に、2階のロビーには打楽器やらモニターが置いてある一角がありました。そういえば、演奏されるマーラーの交響曲第2番にはバンダが入るんでしたね。普通はステージの裏などで演奏するのに、こんなところで一体聴こえるのでしょうか。確かに、このホールは二重扉ではありませんから、ここでも充分なのかもしれませんが。
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 なにしろ、マーラーの生演奏なんてなかなか仙台では聴く機会がありませんから、2階席は満員でした。私のすぐそばに2人、ニューフィルの団員がいましたね。ただ、1階席の前の方と左右の花道の前は、かなり空席があります。ニューフィルがここでラフマニノフをやった時には、このあたりまで満席でしたよ。
 開演10分前に、指揮者の飯森さんが出てきて、お話を始めました。それによると、何でも、今回はギルバート・キャプラン版を使って演奏するのだそうです。これはラッキー、話には聞いていましたが、その現物にこんなところでお目にかかれるなんて。
 そして、いよいよオケの団員が入場してきます。仙台では普通はなかなか見ることのできない「16型」の弦楽器に、4管編成+合唱ですから、もうステージの前の縁にまで椅子が並べられています。でも、出てきたのはオケだけ、合唱はいつ入るのでしょう。2楽章の前でしょうか。
 いよいよ、改修後のこのホールでは最初となるはずのフル編成のオーケストラの音が響き渡ります。しかし、その音には期待していたほどの豊かさはありませんでした。ここではこのサイズのオケは何度も聴いていますし、自分たちでも頻繁に演奏してきましたが、16型でこの響きか、という、ちょっとした失望感がありました。見ると、ファースト・ヴァイオリンなどは、最前列に7プルトも並んでいます。あまりにも広がり過ぎてなんだか音も演奏もまとまらない、という感じがします。あるいは、日ごろやり慣れていない編成に戸惑っているのかもしれませんね。そんなもどかしさは、1楽章の間中、付いて回りました。でも、木管などはとても素敵でしたね。実は、この日はプログラムの他に、ファンクラブの人たちが作った、すべてのオケのメンバーの配置図が配られていました。
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 ちょっと見にくいかもしれませんが、全部の楽器のところに名前と団が書いてあります。書き忘れましたが、このコンサートは仙台フィルと山形交響楽団との合同演奏なのです。ですから、どちらの団の人がどの席次か、ということが分かります。それで木管のトップを見てみると、すべて山響のメンバーによって占められていました。やはり、アンサンブルですから、いつも一緒にやっている人がチームになった方が良いに決まってます。その代わり、コンサートマスターは仙台フィルの神谷さんでしたね。
 そんな、ちょっと危なげな弦楽器でしたが、2楽章に入ったら見違えるように瑞々しい音に変わっていたので一安心。やっと慣れてきたのでしょう。しかし、この楽章の前にかなり長いポーズをとったのに、合唱が入ってくる気配はありません。4楽章の前なんかに入って来られたらいやだな、と、ちょっと不安になってきます。
 その不安は的中、合唱とソリストは、3楽章が終わったところでおもむろに入ってきたのですよ。これには、怒りに近いものがこみ上げてきました。私が、この曲の中で一番好きなのは4楽章の頭なんです。3楽章が終わったところで、さりげなくアルト・ソロが聴こえてくるのが、なににも代えがたい感動を与えてくれるのが、こんなに間を開けてごちゃごちゃやった後に始まったのでは、ぶち壊しです。いや、別に合唱団が悪いのではなく、これは合唱団員が座って待っていられるだけのスペースを確保できなかったこのホールの責任なのですがね。あるいは、ステージが狭くても、それを取り囲む客席に合唱団が座れるようなホールも、他の都市にはいくらでもあるのに、建設計画だけはあってもそれを実行できなかった仙台市の責任なのかもしれません。つまり、マーラーの「復活」を満足のいく環境のもとに聴くことが出来るようなホールは、仙台市にはないのです。それで「楽都」なんて言っているのですから、笑えますね。
 しかし、そんな悪条件にもかかわらず、アルトの加納さんの第一声は、素晴らしいものでした。以前BSでこの人の演奏を聴いて、これなら、と思っていた予感は、見事に的中してくれました。
 そして、長い長い終楽章、もうこの辺になると体力勝負で、金管あたりはかなり疲労が目立ってきましたが、起伏の激しい音楽はそんな傷などお構いなしに、どんどんパワフルなテンションを送りこんできます。問題のバンダも、どこから聴こえてきたのか分からないような不思議な効果を出していましたし、合唱が入る前のフルートとピッコロの掛け合いも、完璧でした。ほんと、このピッコロの人みたいな滑らかなフレーズは、なかなか聴けないものですよ。
 続いて、合唱が入って来ると、それまでの演奏は一体何だったのか、という、まるで異次元にでも迷い込んだような、極上の音楽に変わりました。150人の人が心を合わせて放ったピアニシモは、こんなとてつもない力を秘められるものなのですね。まさにこれこそこの演奏の白眉です。それがフォルテの場面になると、決してオケに隠れることなく、いや、それどころかオケをも圧倒するほどの存在感を示しているのですからね。
 こんなすごい合唱の後に出てくるホルンやトランペットのソロは、かわいそうですね。でも、しっかり合唱の緊張感を受け継いでくれないことには、とてもプロとは言えません。合唱のバックになっていたホルンも、なんと汚いピッチだったことでしょう。こんなところで合唱の足を引っ張るなんて。
 とはいえ、飯森さんのダイナミックな指揮ぶりに煽られて生み出される最後のクライマックスは、それこそ会場全体が熱狂の坩堝と化したような、ものすごいものでした。初めて「生」で体験したマーラーの交響曲第2番「復活」、堪能しました。
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 でも、最後の飯森さんのスピーチは余計でしたね。言いたいことは全部音楽が語ってくれていました。そこに言葉など、邪魔なだけです。それにしても、このコンサートのプログラムの裏表紙に全面広告を出して「協賛」しているのが「東北電力」だというのは、なにかのジョークなのでしょうか。飯森さんが最後に「私たちに力を貸してください」と言った相手は、まさかこの電力会社ではないでしょうね。
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by jurassic_oyaji | 2012-07-21 22:39 | 禁断 | Comments(3)
Commented by さくらら at 2012-07-23 22:47 x
はじめまして。今晩は。m(_ _)m同じ会場にいらしたのですね。

この会館が演奏会に間に合うよう復旧しただけでも奇跡的と思いました。昨年の段階では相当に破損し、予算的に無理な様子でしたので。
宮城県、岩手と同じ被災地。復旧しなければならないところだらけです。

飯森さんがこのコンサートにどれだけかけていたのか、仙フィルのファンクラブのブログなどお読みになるとさらにおわかりになるかと。
普通のコンサートならあのようなコメントはなかったでしょう。まだまだ被災地は非常時が続いているのを充分ご存じで発言なさったのだと思います。
山本先生(音楽学教授)の方が私より専門的な感想書いてらっしゃいますので是非お読み下さい。
http://blog.livedoor.jp/mariko_yamamoto/archives/7279048.html

合唱、身分はアマでも何度もプロと世界のプロと共演している方々です。指導者が世界的プロですので。

東北電力協賛なのは仕方ないです。NHK・生命保険会社の筆頭株主も皆電力会社だらけの日本ですから。

原発稼働より、このようなコンサートにお金使ってもらった方がずっとありがたいです。
末長く温かい目と気持ちで東北の復活・復興を願ってゆきましょう。
Commented by jurassic_oyaji at 2012-07-23 23:10
さくららさん、コメントありがとうございます。
音楽家たちの純粋な気持ちを、電力会社の隠れ蓑に利用されてしまうのはたまらない、とお思いになることはないのでしょうか?
Commented by a silent reader at 2013-03-17 17:00 x
電力会社がスポンサーになると何か不都合があるのでしょうか。彼らは何か反社会的なことをしていて、その隠れ蓑にメセナを使っている、ということでしょうか。そもそも反社会的なことをする企業であれば法の下に裁かれると思いますが。