おやぢの部屋2
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「復活」のキャプラン版
 この間から、ヒマがあれば届いたばかりのキャプラン版を、音友の従来版(1970年改訂版)と見比べて、どこが違っているのか調べているところです。あ、マーラーの交響曲第2番「復活」の楽譜の話です。校訂報告があれば楽に探せるのでしょうが、そこまでのめり込むつもりはないもので、ひたすら力仕事が頼りです。キャプラン自身がウィーン・フィルと録音したDG盤のライナーで「聴き慣れたフルートのメロディがトランペットに変わるようなことはない」と書いてますが、確かに、目立つような変更箇所はなく、ひたすら細かいところで変わっているような印象があります。でも、実際は、1ページ目から違ってますよ。2小節目、低弦の「ドシドレミ♭」のダイナミックスが、音友版では「fff」だったのが「ff」になってますからね。こんな違い、聴いただけでは絶対わからないでしょうが、演奏する時には気持ちの入れ方がかなり変わってくるはずですよ。
 でも、こんな、言ってみれば曖昧な違いではなく、もっと、誰にでも分かるような違いはないかと探していたら、5楽章の最後の方になってやっと見つかりました。ア・カペラで合唱が入って来た後、ソプラノ・ソロが抜け出してくるあたり(487小節)にユニゾンで入っているフルート・ソロが、2小節長くなっているのですよ。つまり、ソプラノが歌い終わる直前まで吹いているように変わっているのですね。これだったら、その最後の部分にフルートが有るか無いかだけですから、客観的に判別できるはずです。
 ところが、それを目安に、間違いなくキャプラン版を使っているはずの彼自身の録音を聴いてみると、そのフルートが全く聴こえないのですよ。ソプラノに隠れてしまっているのでしょうか。しかし、もう一つのキャプラン版というクレジットのあるヤンソンスの録音でも、やはり聴こえません。いずれもSACDですから、この音域のフルートが鳴っていれば、絶対に分かるはずなのに。もう一つ、やはりキャプラン版と謳っているノット盤を聴いてみると、これはしっかり聴こえます。楽譜通り、従来版にはなかった最後のフレーズまで吹き切っていました。試しに、最近の録音で従来版を使っているもの(ジンマン、ゲルギエフなど)を聴いてみると、これもはっきり楽譜通りに吹いているのが聴こえます。つまり、吹いてさえいればこれは必ず聴こえるものだったのですよ。ですから、同じキャプラン版であっても、吹いているものと吹いていないものがあるということになります。これはどういうことなのでしょう。
 そこで、楽譜をよく見てみると、そこには校訂者のコメントがありました。この部分は、その前の弦楽器やトロンボーンのように、「合唱が音を取れない場合」の補助として演奏するためのものなんだというのですね。確かに、よく見てみるとそれらの音符は、少し小さめに印刷されていました。さらに従来版でも、弦楽器の部分にはマーラー自身のコメントとして同じことが書いてありました。ただ、そのあとのフルート(+オーボエ)のフレーズまでは、その指示はなされていない、というのが、従来版の解釈だったのですね。しかし、キャプランはそこまで含めてあくまで「補助」であると主張しているのですよ。つまり、まともな合唱が歌っているのであれば、ここはフルートは演奏することはない、ということなのですね。キャプラン版では、ここはフルートが聴こえて来ないのが正解なのでした。ノットの場合は、合唱を信用していなかったのでしょう。
 しかし、問題はそんな単純なものではありませんでした。それからいろいろ古い録音などを手当たり次第に聴いてみると、キャプラン版の「キ」の字もなかったような時代のものでも、フルートが入っていないものがどんどん出てきたのです。例えば、1975年録音のショルティのSACDなど。
 これは、「もしや」と思うことがあったので、AmzonでDover版の在庫を見つけて即注文しました。それが今日届いたので、問題の場所を見てみたら、予想通り、そこには最初からフルートなどは全く入っていませんでした。Doverは1897年の初版のリプリントですから、初版にはそもそもフルートは入っていなかったのですね。それが、改訂版でフルートパートが加えられ、キャプラン版で、実質的に削除された、ということなのですよ。初版がまだ使われていた時代の指揮者だったら、ここにはフルートは入れませんね。
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 言葉だけでは分かりづらいでしょう?いずれ、楽譜と一緒に詳しく「おやぢ」あたりに書く予定です。
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by jurassic_oyaji | 2012-08-02 21:50 | 禁断 | Comments(0)