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MAHLER/Symphonie Nr.2
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Renate Stark-Voit, Gilbert Kaplan(Editor)
Universal Edition
Kaplan Foundation
UE 34315(Study Score)




マーラーの「交響曲第2番『復活』」の「新しい」楽譜が出版されました。今まで散々演奏されていたこんな「名曲」で、なにをいまさら新しい楽譜?とお思いでしょうが、実は、今まで使われていた楽譜には、かなりいい加減なところがあったので、それをきちんとマーラーの自筆稿に立ち返って、細かいところまでマーラーが指定した通りの楽譜が作られた、ということなのです。そういう作業の末につくられた楽譜は「批判校訂版」、つまり「クリティカル・エディション」と呼ばれ、最近ではベートーヴェンなどで何種類かのものが相次いで出版されています。
マーラーの場合も、1895年にマーラー自身の指揮で初演されたこの曲は、1897年にはライプツィヒのホフマイスター社からスコア(=初版、1898年にウィーンのヨーゼフ・ワインベルガー社に引き継がれます)が出版されましたが、国際マーラー協会によって「全集」が編纂される過程で、1970年にエルヴィン・ラッツによってクリティカル・エディション(=全集版)が作られ、ウニヴェルザール社から出版されています。
しかし、この「全集版」は、様々な点で問題を抱えていたそうです。それに気付いたのが、「『復活』しか指揮出来ない指揮者」として有名なギルバート・キャプランです。彼は各地でこの曲を演奏する際に、全集版のスコアとパート譜の間で楽譜が異なっていることに気づかされ、いっそのこと、自分で新たに校訂をやってみようとしたのです。その作業は、2000年からオーストリアの音楽学者、レナーテ・シュタルク=フォイト女史と共同で進められることになります。資産家であったキャプランは、それ以前からマーラーの自筆稿など多くの資料を収集していましたが(自筆稿のファクシミリの出版まで行っています)、さらにこの校訂を行うにあたって、世界各地から新たに資料を購入したということです。
校訂作業がほぼ終了した時点、2002年12月に、キャプランはウィーン・フィルとこの新しい校訂版(=キャプラン版)による初めての演奏を録音します。2003年にDeutsche GrammophonからリリースされたCD、SACDのライナーノーツには、キャプラン版は、国際マーラー協会から公式の「新クリティカル・エディション」と認められ、ウニヴェルザールとキャプラン財団によって共同出版される旨が告知されています。また、この校訂にあたっての最も重要な資料である、マーラー自身が使用し、多くの書き込みを行ったワインベルガー版のスコアの写真も掲載されています。
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その出版がいよいよ具体化したのでしょう。2005年10月18日には、ロイヤル・アルバート・ホール(!)でキャプラン版の「世界初演」が、キャプラン指揮によるロイヤル・フィルの演奏によって敢行されます。それに続くように、明確に「キャプラン版を使用」というクレジットの入ったアルバムがリリースされるようになります。例えば、2008年3月に録音されたジョナサン・ノット指揮のバンベルク交響楽団のSACDや、2009年12月に録音されたマリス・ヤンソンスとロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のSACD(+DVD)などです。ただ、そのクレジットで、出版年が「2005年(ノット盤)」や「2006年(ヤンソンス盤)」と一致していないのが、少し気になります。
そのあたりの事情は、2006年3月11日にすみだトリフォニーで群馬交響楽団と「キャプラン版」の「日本初演」を行った高関健さんのこちらの「手記」を読めば、分かるのではないでしょうか。2006年の時点でも、まだミスプリントの確認作業などが行われていたのですね。
実際にスコアや校訂報告が出版されたのは2010年のことでした。それからしばらくして、このようにスタディ・スコアも簡単に手に入るようになりました。確かに、間違った音符や、曖昧な指示は、きっちり直されているようでした。それらの訂正個所は、おそらく耳で聴いても分からないようなものでしょうが、演奏する側では間違いなく確信を持って表現する勇気の持てるものに変わっているのではないでしょうか。
そんな中で、たぶん誰でも違いが聴き分けられる箇所が見つかりました。合唱が初めて入る部分、第5楽章の475小節(練習番号31)から493小節(練習番号33)までを、初版、全集版、キャプラン版と比較してみてください(全集版は、初版の版下をそのまま使い回しているのですね)。
(初版)
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(全集版)
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(キャプラン版/合唱パートは下3声部を省略)
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※赤枠の部分は、ヴァイオリン、ヴィオラ、トロンボーンは「合唱を助けるための補助」と注釈があり、通常は演奏されません。
※緑枠の部分は、キャプラン版ではやはり「合唱を助けるための補助」という解釈です。ただ、キャプラン自身の録音などでは演奏されていませんが、ノット盤では演奏されています。全集版を使っていても、ここは初版のようにフルートやオーボエを入れないものもあります。
※キャプラン版には、「合唱は最初は座ったままで歌うこと」という指示があります。ヤンソンスのDVDでは、それに従っています。

Score Artwork © Universal Edition, Kaplan Foundation
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by jurassic_oyaji | 2012-08-05 20:48 | 書籍 | Comments(0)