おやぢの部屋2
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Chansonettes mit Bach
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Ute Loeck
Georg Christoph Biller
Stephan König(Pf)
RONDEAU/ROP6060




このジャケット、ブロンドの美女と、「スクール・オブ・ロック」に出てきたジャック・ブラックみたいな不細工なデブが並んでいますね。女性の方は「シャンソン歌手」ですが、デブの方には「トマス・カントル」という重々しい肩書きがありますよ。まさか!と思ってしまいますが、よく見てみるとこの顔は確かにあのヨハン・セバスティアン・バッハから数えて17人目にその肩書きを与えられた、ゲオルク・クリストフ・ビラーその人ではありませんか。
その二人の前には楽譜のタイトルが見えますが、片方の「バッハ」はともかく、もう片方の「ビートルズ」というのは、いったい何なのでしょう。まさか、ビラーが「スクール・オブ・バロック」である聖トマス教会の合唱団を指揮して、ビートルズ・ナンバーを演奏しているのではないでしょうね。
実際にアルバムを聴いてみると、その「まさか」は、もっとすさまじい状態で現実となっていました。歌っていたのは、なんとこのビラーご本人だったのですよ。一応、かつてはその少年合唱団のメンバーだったビラーは、きちんと「声楽家」としての修業も行ってきたのですが、結局「ソリスト」として大成することはありませんでした。そんな彼が、ここでは「She Loves You」を「She Loves Me」と歌詞を変えて、相方のシャンソン歌手ウテ・レックに「愛されている」という設定でノリノリの「ソロ」を披露してくれているのです。カントルがこんなことまでやっているのですから、いったい彼の素顔はどんなものなのか、興味がわいてしまいます。
アルバムタイトルの「Chansonettes mit Bach」というのは、シャンソンのみならず、ミュージカルなどでも活躍している歌手、俳優のレックが、2005年から始めたパフォーマンスなのだそうです。バッハの曲と、それとは全く関係のない曲を融合させるという、別に目新しくもなんともないコンセプトですが、なかなかの評判を呼んだようで、とうとうこんなCDまで出ることになってしまいました。そこに、言ってみれば「バッハの権威」であるビラーが加わるのですから、こんなすごいことはありません。
とは言っても、そんな手あかのついたネタですから、今更、という気はします。それどころか、実際に聴いてみると、予想をはるかに超えたつまらなさなのですね。最初に「イギリス組曲第1番」のプレリュードに続いて「レディ・マドンナ」が歌われるのですが、それは聴き手に「いったい、どこが同じなの?」という気持ちを抱かせたまま、独りよがりの勘違いで突き進んでいく、という以外の何物でもありませんでした。その次の曲などは、「平均律」の1番を伴奏にグノーの「アヴェ・マリア」ですよ。こんなんで本気に笑いを取ろうとしているなんて、信じられません。
それと、このレックさんの声が、「シャンソン」という謳い文句とは裏腹に、やたらドスがきいているうえに、不快な縮緬ビブラートが付いているという、それこそブレヒト・ソングあたりを歌わせればこれ以上のものはない、という(実際に、彼女はそういうものを歌っています)ミスマッチぶりなのですね。
そして、そこにビラーのヴォーカルが加わります。これが、はっきり言って「ヘタ」、なんですね。まさに宴会でおやぢが余興に歌っている、というノリなのですよ。
そんな「宴会芸」が延々と続いた後、最後を締めくくるのがバーンスタインの「サムウェア(from ウェストサイド・ストーリー)」のデュエットです。このアルバム、導入のMCこそライブっぽい作り方ですが、演奏そのものはスタジオ録音、もしこれがライブだったら、こんなおぞましい「宴会デュエット」は、会場では完全に浮き上がっていたことでしょう。そもそも、この曲はバッハのカンタータ第19番の5曲目のアリアと一緒に歌われているのですが、カンタータの冒頭のテーマは6度の跳躍なのにバーンスタインは7度の跳躍、全然似てません。

CD Artwork © Rondeau Production GmbH
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by jurassic_oyaji | 2012-08-08 00:24 | 歌曲 | Comments(0)