おやぢの部屋2
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PENDERECKI/Fonogrammi, Horn Concerto etc.
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Urszula Janik(Fl)
Jennifer Montone(Hr)
Antoni Wit
Warsaw Philharmonic Orchestra
NAXOS/8.572482




このレーベルでのヴィットのペンデレツキ・シリーズは、最近はシビル・イェーツという写真家の作品でジャケットのデザインを統一しています。今回のCDのインレイには、そんなジャケットがまとめて紹介されていますが、それはまるでそれ自体がアートのような素晴らしさです。
もちろん、そんな外観だけではなく、アルバムとしてのコンセプトも、毎回かゆいところに手が届くような配慮がなされています。今回も、1960年代から1970年代にかけての「前衛」と、2008年に作られたばかりの「ロマンティック」な新作を同時に聴かせる、という、いつもながらの冴えた選曲が光ります。
前半の5曲が、そんな「前衛」を代表する名曲の数々、このあたりは作曲者自身の指揮によるEMI以外はまず耳にしたことはなかったので、それをヴィットのクレバーな指揮で聴けるのはとても楽しみです。
ところで、その中に、オーケストラの木管パートが全員でオカリナを演奏するというぶっ飛んだオーケストレーションで有名な「ヤコブの夢」がありますが、そのタイトルが、見慣れた「The Dream of Jacob」ではなく、「The Awakening of Jacob」になっていたのに、ちょっと違和感がありました。「ヤコブの目覚め」ですね。もちろん、これは1974年に作られたあの曲に間違いありませんから、いつの間にかタイトルだけが変わってしまったのでしょうか。
気になったので、出版社のサイトで調べたら、なんとこの曲のタイトルはドイツ語で「Als Jakob erwachte aus dem Schlaf, sah er, daß Gott agewesen war. Er hat es aber nicht gemerkt.」という、とんでもなく長いものだったのですね。日本語だと「ヤコブ目覚めしとき神のいますを見しが、そを知らざりき」となるのだそうです。知りませんでした。
そこで、ふと「帯」に目をやると、そこには「ヤコブ目覚めし時」という「邦題」が付いていましたよ。日頃、誤記や誤植のやり放題という印象しかないこのメーカーの「帯」ですが、こればかりは感心してしまいました。原題まできちんと調べたのでしょうか。侮れません。
これらの曲は、EMI盤に比べると録音がとてつもなく精緻になっていました。フルート・ソロが大活躍する「フォノグラミ」の冒頭の打楽器の強打を聴いただけで、それはもはや次元の違う音になっていることが分かります。かつては、なにかごちゃごちゃと音が重なっていただけ、という印象が強かったものが、もっと細部にわたってそんなサウンドの「元」の仕組みが分かるような録音が可能な時代になったのですね。そして、それだけの録音にさらされてもビクともしないほどの強靭さを、この時期の作品はしっかり持っていた、という事実には、感動すら覚えます。
一方の、全く別人が作ったかのような「ホルン協奏曲」がここに収録されている意味は、ヴラトコヴィッチのソロと作曲者自身の指揮による世界初録音盤を併せて聴くことによって、はっきりしてくるのではないでしょうか。「冬の旅」というサブタイトルが付いているこの曲は、オーケストラが作り出す様々な風景の中を旅するホルン・ソロ、といったようなコンセプトで作られたものなのだそうですが、初録音盤で聴いた時には、それは殆ど意識されることはなかったような気がします。それが、今回のヴィットの演奏では、まさにその「風景」が眼前に広がっているのがはっきり感じられるのですよ。そう、それは、「風景」を描くことにかけてはお得意の、映画やドラマの音楽そのものだったのです。そこで改めて初録音盤を聴き直すと、なぜかそこまではじけてしまうことに対する羞恥心のようなものが、べったりと付いて回っているのですね。それが、「現代作曲家」としての意地だったとしたら、それは己を知らない愚か者というほかはありません。
ヴィットは、ここでもこの作曲家の「本質」を、巧みなプログラミングと演奏で明らかにしてくれました。

CD Artwork © Naxos Rights International Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2012-08-09 20:08 | 現代音楽 | Comments(0)