おやぢの部屋2
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DVORAK/Symphony No.8
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Claus Peter Flor/
Malaysian Philharmonic Orchestra
BIS/SACD-1976(hybrid SACD)




最近のアジアのオーケストラの情勢などには全く無関心でしたから、「マレーシア・フィル」などという団体が突然BISの新譜に顔を出した時には、いったい何者だ、と思ってしまいました。同じレーベルから出ている、シンガポール交響楽団の演奏はかなり聴いていましたが、そもそもそのお隣の国にBISの録音に対応できるほどのオーケストラがあるなんて、全然知りませんでしたから。
調べてみると、このオーケストラは、単に「アジアのオケ」というだけでは片づけられない、もっとグローバルな規模を持った団体であることがわかりました。何しろ、スポンサーが、「ペトロナス」という国営の巨大石油企業なのですからね。名前からして、それっぽいですね(パトロンなんす)。
オーケストラを作るにあたっては、潤沢な資金に物を言わせて、オーディションによって全世界から優秀な演奏家を集めたそうです。その結果、105人のメンバーの国籍は、25ヵ国にも及ぶことになってしまいました。ほとんど「ワールド・オーケストラ」といった感じですね。名前を見ると欧米系のほかに、ロシアっぽい人がたくさんいるような気がします。もちろん、日本人も何人か見かけられますよ。その分、「地元」であるマレーシアの人たちの割合は少なくなっているのでしょうね。
ペトロナスの財力は、オーケストラだけではなく、専用のコンサートホールまで作ってしまえるほどのものでした。1998年8月17日に行われたこの新しいオーケストラのお披露目コンサートは、同時に、この企業の富の象徴であるクアラルンプールの88階建ての超高層ビル「ペトロナス・ツインタワー」の中に作られた「デワン・フィルハーモニック・ペトロナス」というシューボックス・タイプのホールのこけら落としでもあったのです。それは、収容人員こそ920人と小振りですが、大型のパイプオルガンもしっかり設置されている素晴らしい音楽ホールです。マレーシア・フィルは、ここを本拠地に年間100回以上のコンサートを開催していますし、このSACDの録音もこのホールで行われました。
こんな恵まれた環境の中ですから、オーケストラのメンバーは本当にのびのびと演奏活動に専念できるのでしょうね。きっと、ギャラも高いのでしょう。
そもそもクラシック音楽は、何世紀も前に出来た時からパトロンの後ろ盾なしには成立しえないものでした。そして、それは現在でも全く変わらない状況の下にあります。某地方都市のように、首長がお金を出さないと言えば、オーケストラの1つや2つなくなってしまうのは、ごく当たり前のことなのです。したがって、某電力会社が「震災復興支援コンサート」に協賛してお金を出すなどという、まるで放火犯が消火活動を手伝っているような怪しげな行動に対しても、オーケストラとしてはごく当然であることのようにふるまって、唯々諾々と受け入れざるを得ないのです。こんな悲しいことはありませんが、いくら原発の再稼働に反対していたとしても、オーケストラの活動が続けられないのでは、なにもならないのですから仕方がありません。
そんな、お金の心配など全くする必要のないオーケストラが演奏した、ドヴォルジャークの交響曲第8番には、なにかとてもさわやかな息吹があふれていました。そして、誰しもがこの曲には欠くべからざる要素だと考えているはずの「民族性」のようなものは、そこからは見事に拭い去られていたのです。言ってみれば、まさに国境を越えて通用するドヴォルジャーク、でしょうか。3楽章の、泥臭さのかけらもない叙情性や、まるでハリウッド映画のような終楽章のファンファーレなど、ちょっと今までは怖くて実行できなかったようなアプローチが、ここには満載です。
国籍を背負わないからこそ拓くことのできた新しい地平、そんな感じがしませんか?

SACD Artwork © BIS Records AB
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by jurassic_oyaji | 2012-08-13 20:50 | オーケストラ | Comments(0)