おやぢの部屋2
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TORMIS/Works for Male Choir
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Cecilia Rydinger Alin/
Orphei Dränger
BIS/SACD-1993(hybrid SACD)




「世界最高の男声合唱団」と言われているスウェーデンの「オルフェイ・ドレンガー(OD)」は、ご存じのとおり1853年に創設された歴史のある合唱団です。その時々に最高の指揮者を擁して、最高の演奏を作り上げてきたという歴史が、今日まで脈々と続いているのでしょう。なんせ、1910年から1947年までは、あのフーゴー・アルヴェーンという国民的作曲家が指揮をしていたのですからね。そして、彼の次の次からは「世界最高の合唱指揮者」であるエリック・エリクソンが1951年から1991年まで40年にわたって指揮者を務めることになります。ただ、その「政権」の後期、1985年からは、ローベルト・スンドも指揮者として加わり、エリクソン退任後はそのまま2008年までそのポストを守り続けました。
2008年から、この名誉ある地位を引き継いだのは、女性指揮者セシーリア・リューディンゲル・アリーンでした。2010年には、彼女に率いられて、この合唱団は5年ぶりに来日します。その時、東京オペラシティのコンサートホールでのコンサートを実際に聴いたのですが、彼女は100人近くのいかつい男たち(ほんとに、団員はみんな背が高かったですね)を前にして、とてもしなやかな、それでいてダイナミックな指揮ぶりを披露してくれていました。
この新しいチームでのアルバムは、2009年にBISからリリースされた「Christmas Songs」(CD-1833)が最初のものでした。そして、2枚目となる今回はまさに「真打ち登場」という感じでトルミスです。しかもODにとっては初めてとなるSACDです。
期待通り、このSACDからは今までCDで聴いて来たODとはまるで次元の異なる音が聴こえて来ました。彼らが作り出すサウンドはあくまで滑らかで、潤いをもって伝わってきます。それはまさに、オペラシティで体験したもののかなり近くにある、耳に優しいリアリティを持ったものでした。もうその音を聴いているだけで幸せになれるという、それは極上の響きだったのです。さらに、歌っているのは全員男声のはずなのに、時折、女声でなければ決して出せないような音色が混ざっていることを発見したのも、新鮮な驚きです。どうしたらそんな音が出せるのかと、スピーカーの前で間近に彼らの声に対峙していると、ホールでは分からなかったような歌い方の「秘密」のようなものまではっきり分かってしまいます。SACDというのは、それほどのものすごいフォーマットなのですね。ホームセンターじゃないですよ(それは「ホーマック」)。
収録曲の中では、実際に歌ったこともある「古代の海の歌」で、彼我のどうしようもないレベルの隔たりに圧倒されることになります。そもそも音色やハーモニーは問題外ですが、トルミスの特徴的な技法である同じパターンの繰り返しに、しっかりとした「意味」があることをいやというほど知らされてしまいます。言葉の壁でしょうね。途中で現れるカモメの鳴き声の擬音も、なんという音楽的な深さ。
擬音と言えば、このアルバムの最初に入っているOD(とフィンランドのML)によって委嘱された「嵐の海への呪文」の中には、風の音の模倣でしょうか、口笛のような不思議な音が入っています。同じ曲をスヴァンホルム・シンガーズで聴くと生の口笛ですが、ここではもっと深みのある音、演奏自体もより幅広い風景を感じさせるものに仕上がっています。
そのスヴァンホルム・シンガーズが最初に録音した男声版の「鉄を呪え」も、非の打ちようのない素晴らしさ、男声合唱の持つダイナミックな魅力が、最高のソノリテで味わえます。
ゲストに、オペラシティでも登場したソプラノのエリーン・ロンボを迎えての「幼き頃の思い出」では、ソロと合唱がしっかり寄り添っている音色が素敵です。それ以外の曲でのソロは、全員メンバーが担当しているのでしょう。「私は3つの美しい言葉を持っている」という若いころの作品では、渋い音色のフルート・ソロまで(吹いてみたいなあ)。

SACD Artwork © BIS Records AB
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by jurassic_oyaji | 2012-08-15 21:09 | 合唱 | Comments(0)