おやぢの部屋2
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BRUCKNER/Symphony No.8(1887 version)
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Franz Welser-Möst/
The Cleveland Orchestra
ARTHAUS/108 069(BD)




SACDを聴いてしまうともはやCDは聴きたくなくなってしまうのと同じように、一度BD(ブルーレイ・ディスク)を体験してしまうと、二度とDVDの世界には戻れなくなってしまうのではないでしょうか。実は、これは昨年DVDで出ていたものなのですが、その時には食指はしゅこしも(少しも)動きませんでしたから。
しかし、今回BDによってリリースされたことと、演奏されているのがおそらく映像では初めてとなる「第1稿」だということで、つい入手してしまいました。最近では通常の「第2稿」(ハース版とノヴァーク版の2種類があるのは、ご存じの通り)以外に、生前には演奏も出版もされなかった「第1稿」の演奏によるCDはだいぶ出るようにはなってきましたが、やはり「変わり者」という感じはぬぐえません。まして、映像でこんな珍しいものが見られるのは、かなりレアな体験になるはずですよ。
別に映像だからと言って、「第1稿」の違いが分かるというものではありませんが、例えば第3楽章のクライマックスでトライアングルとシンバルが華々しく炸裂されるところでは、シンバルは「ジャーン」ではなく「ジャン、ジャン、ジャン」と3回鳴らされます。ここでは、シンバル奏者の姿がアップになりますから、「なんか違う」と気づくかもしれません。
実は「第1稿」は楽器編成も少し違っています。「第2稿」は木管楽器はそれぞれ3人の奏者が必要な「3管編成」なのですが、「第1稿」の場合、不思議なことに最後の楽章だけが「3管編成」で、それまでの3つの楽章は「2管編成」で書かれているのですよ(ピッコロだけは、3楽章の最後に入っています)。おそらく、作曲している間にだんだん編成を大きくしようという構想が募って来て、最後だけ「3管」にしてしまったのでしょうね。ですから、これを実際にステージで演奏する時には、木管楽器の3番奏者は、まるでベートーヴェンの「第9」の合唱団のように、自分の出番が来るまでひたすら待っていなければならないのですが、それがこの映像からははっきり分かるのですね。ファゴットだけは3番の人もアシストを吹いていましたが、フルート、オーボエ、クラリネットの3番は、何もしないでただ座っているだけでした。さる指揮者が言っていたことですが、ブルックナーという人は、それぞれの楽器の特性についてとんと無頓着だったのですね。およそ、その楽器にふさわしくないような音を使ったりしているというのですよ。ですから、彼は楽器だけではなく、それを演奏する人のことなんかも、全く考慮するという発想がなかったのだ、というのが、この律儀に自分たちの役割を全うしている3番奏者たちの姿を見ていると、如実に分かってくるのですね。ヘルマン・レヴィが演奏を拒否したのも、もしかしたらこんなところに問題があったのかもしれませんね。
映像は、クレーン・カメラを駆使して、最近リニューアルされた黄金に輝くアールデコ、あるいは古代エジプトの様式を取り入れた豪華絢爛なセヴェランス・ホールの模様を伝えてくれます。それだけでなく、音声関係のクレジットを見てみると、録音を担当しているのは元TELARCのエンジニアが作った「5/4」のメンバーではありませんか。ここでは、まさにいにしえのTELARCサウンドそのものの、楽器の存在感と煌めきが存分に味わえるオーケストラの響きを堪能できます。特に、金管楽器のゴージャスな音には、しびれます。しかし、この映像からオーボエ奏者が「耳栓」をつかっているのを見てしまうと、それはすぐ前に座っている同僚にはあまりに強烈すぎることも同時に分かってしまいます。
ウェルザー・メストの指揮は、そんな華麗な映像と音に見事にマッチした、まるで室内楽のように精緻に磨き抜かれたブルックナーを聴かせてくれています。今は、こういうスマートなブルックナーが受け入れられるような時代なのでしょうね。
ただ、ブックレットの「稿」に関する説明は、全くのデタラメですので、信用しないでください。

BD Artwork © Arthaus Musik GmbH
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by jurassic_oyaji | 2012-08-19 21:32 | オーケストラ | Comments(0)