おやぢの部屋2
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LIGETI/String Quartet No.2 etc.
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JACK Quartet
WIGMORE HALL/WHLive1153




「ジャック・クァルテット」というアメリカの若いアンサンブルが、ロンドンのウィグモア・ホールで行ったコンサートのライブです。ジェルジ・リゲティ、マティアス・ピンチャー、ジョン・ケージ、ヤニス・クセナキスという4人の「現代」作曲家の作品ばかりを演奏したという、このホールには珍しい「前衛的」なプログラムに、惹かれます。普段はお笑い専門ですからね(それは「ユーモア・ホール」)。
ところで、この弦楽四重奏団の名前である「ジャック」というのは、いったい何なのでしょう。普通、こういう団体のネーミングとしては有名な作曲家の名前(スメタナ)や地名(東京)、あるいは、メンバーのうちの誰かの名前(アルディッティ)などに由来するものが多いような気がします。そうなると、「ジャック」というのは、メンバーの名前なのでしょうか。しかし、4人の名前は、クリストファー・オットー、アリ・ストレイスフェルド(Vn)、ジョン・ピックフォード・リチャーズ(Va)、ケヴィン・マクファーランド(Vc)と、その中にはジャック・なんとかさんは見当たりません。あるいは、みんながジャック・スパロウ船長のファンだとか。
ただ、「JACK」と、すべて大文字なのが気になります。そこで、メンバーのファーストネームの頭文字を見てみると、クリストファーの「C」、アリの「A」、ジョンの「J」、そしてケヴィンに「K」と、見事に「JACK」のパーツが揃っていましたね。実は、ブックレットにはこんな「体文字」の写真がありました。これを見ていればすぐ気が付いていたのに。
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ただ、こんな名前を付けてしまうと、もうメンバー・チェンジが出来なくなってしまいますね。チェロのケヴィンが脱退したら、その後釜にはケントさんとかキングさんに入ってもらうしかないのでしょうか。あるいは、誰かが辞めるときは、このアンサンブルも解散するとか。それもまた潔い生き方ですね。
このライブCDには拍手もきちんと入っていますから、おそらくこのコンサート当日の模様が、順番にそのまま収録されているのでしょう。そこで、まずはすっかり「現代音楽の古典」として定着した感のあるリゲティの「弦楽四重奏曲第2番」です。この作品から彼らはまるで作られたばかりの曲のような新鮮さで、新たな魅力を引き出してくれています。非常に静かな第2楽章などは、楽器を演奏するのではなく、まるで人の声で歌っているようなちょっと不思議な感触を聴かせてくれます。そうすると、そこからはまるであの合唱曲の「ルクス・エテルナ」のようなテイストが漂ってくるのですよ。次の楽章のピチカートの精度も、おそらくリゲティが考えていたのとは全く別の次元の高さを持っているのではないでしょうか。これは、21世紀になって、人間の行動様式が全く変わってしまったからこそ可能になった恐るべき演奏です。
次の「Study IV for Treatise on the Veil」という2009年の作品は、4人の中で唯一ご存命の(いや、まだ40歳という若手)マティアス・ピンチャーの新作です。この人の名前は以前ラトルの「惑星」が出たときに抱き合わせで入っていた天体がらみの現代作品の一つを担当していた人として、記憶に残っていました。そのオーケストラ曲はまるで武満のような静謐さと、ダイナミックさが同居していたような印象ですが、こちらのクァルテットの曲には、その静謐さをさらに凝縮したような味がありました。もう、ほとんど何の楽器かもわからないような音色は、確かに武満の系譜を継ぐものだと確信させられるものです。
そのあとに、ジョン・ケージの「String Quartet in Four Parts」のような脱力感満載の作品を持ってこられると、いきなり会場の空気が変わります。そして最後に、まさにこのメンバーならではの圧倒的な音塊でクセナキスの「Tetras」が演奏されると、これはもしかしたら4コママンガのような「起承転結」を狙ったプログラミングなのか、などと思ってしまいます。完璧です。

CD Artwork © The Wigmore Hall Trust
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by jurassic_oyaji | 2012-08-27 20:00 | 現代音楽 | Comments(0)