おやぢの部屋2
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HOLST/Choral Works
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Graham Ross/
Choir of Clare College, Cambridge
The Dmitri Ensemble
HARMONIA MUNDI/HMU 907576




「ホルスト」の合唱曲集、です。しかし、この「ホルスト」は、あの「惑星」で有名なグスターヴ・ホルストではなく、その娘さんのイモジェン・ホルストのことです。以前からこの「イモジェンさん」の名前は、例えば「惑星」の2台ピアノのためのバージョンを出版した人というような、父親の作品の校訂や出版に尽力したという方としての認識はあったのですが、彼女は作曲家としても活躍していたのですね。今まで、室内楽などの録音はあったのだそうですが、今回はすべて世界初録音、つまり、ほとんどの人が初めて耳にすることになる合唱曲が集められているCDが出ました。
イモジェン・ホルストは、1907年に生まれて、1984年に亡くなっています。このアルバムにはかなり厚ぼったいブックレットが付いていますが、それには彼女の晩年の写真がたくさん掲載されています。かなり大きめの鼻が特徴ですが、これは父親譲りのようですね。それらの写真からは、音楽学者、指揮者、作曲家として生涯独身で過ごした女性の老後の穏やかさのようなものを感じることはできないでしょうか。ジャケットの丸い眼鏡はジョン・レノンみたい(それは「イマジン」)。そのほかに、彼女の自筆の楽譜の写真も載っていますが、とても読みやすい楽譜ですね。
そして、アルバム自体のプロデュースと、さらに録音までも手掛けているのが、あのジョン・ラッターだというのにも、注目です。ここで演奏している「ドミトリー・アンサンブル」のデビュー・アルバムで、プロデュースと録音を担当したのがこのラッターでしたし、クレア・カレッジの合唱団で自作を録音した時にも、やはりプロデュースだけではなく、録音も担当しています(NAXOSの「Mass of the Children」など)。作曲家でありながらエンジニアのような特殊な能力が要求される仕事のプロなのですから、ラッターという人はすごいものですね。
このイモジェンのアルバムでも、ラッターは選曲などにも関与しているのでしょうね。そのラインナップは、まず彼女の若いころ(20歳!)のものから始まって、年代順に作品が並べられているというものでした。さらに、最後には彼女の親友であったベンジャミン・ブリテン(彼女のお墓は、そのブリテンとピーター・ピアーズのお墓のすぐ後ろにあるそうです)に頼まれて、オルガン伴奏の合唱曲にオーケストレーションを施したものなども収録されていて、彼女の「編曲家」としての成果も紹介されています。
まず、1927年に作られた「Mass in A minor」という、初期の作品です。無伴奏の混声合唱のためのフル・ミサですが、ポリフォニーの技法を取り入れたり、中世風の旋法が聴こえたりと、きちんと過去の遺産を受け継いでいこうという姿勢が見て取れてほほえましくなるような曲です。その中には、彼女の一世代前のイギリスの作曲家が共通して持っているようなテイストも満載、聴いていてとても心が温かくなるような気がします。
それ以後の作品になると、そのような素朴な作風からは少し離れて、同じ時代の「新しさ」をしっかり取り入れ、過去の再生産ではない、彼女自身のアイデンティティを見つけようと模索しているような姿勢が感じられるようになってきます。確かに、それは素晴らしいことなのですが、その結果「現代」の人たちが聴いたときになんとなくつまらなく感じられてしまうのは、仕方のないことです。このころは、誰しもがそんな「新しさ」を追い求めることに汲々としていたのですからね。
ただ、そんな中でハープと女声合唱のための「Welcome Joy and Welcome Sorrow」は、素直な心情が表に現れていて気持ちよく聴けました。
ブリテンの作品の編曲も、なかなかいい感じではないですか。おそらく、原曲よりも数段親しみが増しているのではないでしょうか。
合唱は、何か声が散漫に聴こえてしまいます。グラハム・ロスは、合唱を指揮するのはあまり上手ではないのでしょうか。

CD Artwork © Harmonia Mundi USA
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by jurassic_oyaji | 2012-08-31 10:19 | Comments(0)