おやぢの部屋2
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The Greatest Film Scores of Dimitri Tiomkin
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Whitneky Claire Kaufman(Vo)
Andrew Playfoot(Vo)
Richard Kaufman/
London Voices
London Symphony Orchestra
LSO LIVE/LSO0720(hybrid SACD)




ロンドン交響楽団と言えば、かつては「スター・ウォーズ」、最近では「ハリー・ポッター」などの映画のサウンドトラックをどんどん演奏していたことで、一部の人にとってはお馴染みのオーケストラでした。これらのヒット作で、あのジョン・ウィリアムスのスコアを演奏、それが全世界の人々に「聴かれた」わけですから、このオーケストラは「世界で一番多くの人に聴かれているオーケストラ」と言っている人もいるぐらいです。もちろん、そのような言い方の中には、クラシック・オーケストラに対しての揶揄の気持ちもいくらかは含まれていることでしょう。あくまで伝聞ですが、実際にそのように言われたこのオーケストラの関係者は、あからさまに不快の念を表情にあらわしたといいますからね。
ジョン・ウィリアムスがそうであったように、このような重厚な「シンフォニック」の映画音楽を書いた作曲家は、最初はしっかりと「クラシック」の素養を身に着けていたものです。ハリウッドにそのようなスコアを提供する先駆者となったエーリッヒ・コルンゴルトも、本当はまっとうなオペラを作りたかったものが、やむなく映画音楽への道を選ばなければならなかった人です。
そのコルンゴルトの次の世代にあたるのが、このアルバムの主人公、ディミトリー・テイオムキンです。彼もリムスキー・コルサコフの孫弟子、あるいはグラズノフの弟子としてまっとうな「クラシック」を身につけ、さらにはピアニストとしても大活躍(ガーシュウィンのピアノ協奏曲をパリで初演したとか)していたものの、映画音楽の道へ入った後には、どっぷりその世界でまさに職人的な手腕を発揮し、大成功を収めることになりました。彼の仕事を聴く限り、コルンゴルトとは違い、もはや「クラシック」への未練は完全に断ち切られているように思えます。正直、「ローハイド」の作曲者がティオムキンだったなんて、初めて知りましたし、ここには入っていませんが、「北京の55日」などは、ブラザース・フォアが歌った主題歌のレコードがヒットチャートをにぎわしたこともあったのですからね。
今回、「コンサート」として映画音楽を演奏するというこのオーケストラのシリーズの最初を飾るにあたって、指揮者として選ばれたのが正真正銘の映画音楽畑の指揮者、リチャード・カウフマンだったというのも、当然のことでしょう。これは、同じロンドン交響楽団とは言っても、ゲルギエフやデイヴィスが指揮をしているオーケストラとは明らかに異なるキャラクターを求められるものなのですからね。もちろん、その中で映画の主題歌を歌うのも、「vocalist」とクレジットのある、自然な発声でマイクを使って歌う人たちでした。そのうちの一人、「野生の息吹」などを歌っているホイットニー・クレア・カウフマンは、指揮者の娘なのだそうです。彼女は「マンマ・ミーア!」のソフィーを歌うなど、ショービズの世界で実績を重ねている人で、ここでもポップ・ソングの王道を行く伸びのある声を聴かせてくれています。「真昼の決闘」の有名な主題歌を歌っているアンドルー・プレイフットも、なかなか渋い声ですね。
そういう音楽の中で、合唱が果たす役割は、ヴォーカリストほど重要ではありません。スコアの中では、彼らはもっぱら金切り声でその場を盛り上げるという仕事に従事しているように思えます。したがって、ロンドン・ヴォイセスがいかに卓越した合唱団であっても、その真の力を披露する場所は、ここにはありません。
おそらく、いくら「シンフォニック」なスコアだと言っても、コンサートホール内の「生音」でそのダイナミックスを表現するのは、極めて難しいことなのではないでしょうか。そういう意味で、いつものような地味なサウンド作りに終始しているSACDの録音チームの仕事ぶりには、大きな不満が残ってしまいます。

SACD Artwork © London Symphony Orchestra
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by jurassic_oyaji | 2012-09-01 23:36 | ポップス | Comments(0)