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Neue Musik für Flöte und Blasorchester
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Günter Voglmayr(Fl)
Karl Geroldinger/
SBO-Ried-Sinfonietta
ORF/CD 3116




今年の1月に若くしてお亡くなりになったウィーン・フィルのフルート奏者、ギュンター・フォーグルマイヤーが、2009年と2010年に録音した放送用の音源が、CDになりました。
タイトルにあるように、ここで演奏されているのは、フルート・ソロと吹奏楽のための作品です。原語では「ブラスオルケスター」と表記されていますが、これはただの「吹奏楽団」のこと、「管弦楽団」という訳語の語源である「オルケスター」とは、似て非なるものです。
さらにタイトルには「Neue Musik」とありますが、これもこういう文脈では「新しい音楽」ではなく「現代音楽」、あるいはカタカナで「ゲンダイオンガク」と書かれる時により実態が伝わってくるような気がする音楽のことです。要するに、ひたすら作曲家の自己満足から、聴き手との距離が大きいほど価値があると思われているような「難解な」、つまり何回聴いても分からない音楽なのでしょう。
ちょっと、そんなものを聴かされるのは、いくらフルートが主役でも辛いのでは、と思いつつ、全く聞いたこともない名前の作曲家たちの最新作を聴き始めることになるのです。しかし、アルビン・ツァイニンガーという人の「道すがらの短編集」という意味不明のタイトルの曲が、ピッコロの派手なフレーズで始まったとたん、そんな先入観はものの見事に吹っ飛んでしまいました。確かにとんでもなく難しい技巧が要求される曲ではありますが、そこから聴こえてくる音楽はいとも親しみやすいものだったのです。この作品は全部で4つの曲から出来ていますが、1曲目がピッコロ、2曲目が普通のフルート、そして3曲目がアルトフルートと、それぞれの楽器の可能性をとことん追求したものです。特にアルトフルートは、ハスキーな音色を大切にしながらも、大きな図体には似合わないほどの軽やかなパッセージが与えられていて、驚かされます。その流れで最後の4曲目は、と思ったら、フルートとピッコロでした。ちょっと肩透かし。
次の、トリスタン・シュルツェという人が作った「時間旅行」という曲は、さらに親しみやすい内容でした。ここでもフォーグルマイヤーはピッコロからアルトフルートまで忙しく持ち替えて、様々なシーンに対応していますが、そのシーンというのがバロック音楽からビッグバンド・ジャズまでという、まさに時空を超えた広がりを持っているのですから、その楽しさはハンパではありません。
その次のバルドゥイン・シュルツァーという人の作品は「協奏的スケッチ」です。これは、今までのものと異なり、かなりシリアスな、まさに「ゲンダイオンガク」のテイストを持った深い音楽、と思っていると、最後の部分ではいきなりノーテンキなマーチがピッコロをフィーチャーして現れるのですから、ちょっと訳が分かりません。
そして、ソロにアコーディオンが加わったヴォルフガング・プシュニッヒの「2つの小さな天星」は、まさにジャズそのもの。フルートもアコーディオンも、シンプルなテーマをもとにした、おそらく楽譜には書かれていない「ジャジー」なフレーズを繰り広げます。
そして最後はトーマス・ガンシュという人の「バーディ・ヌム・ヌム」という、「サンバ」です。これはそのまんま「サンバ」、軽快なラテンリズムに乗ったどこまでも明るい音楽が、いつ果てるともなく続きます。
おそらく、このあたりのフットワークの軽さは、この「ブラスオルケスター」というジャンルの最も得意とするところでは、という気がします。ジャズでもラテンでも、簡単になりきれてしまう自由さがここにはあるのでしょう。こんなことは、普通の「オルケスター」では絶対にできません。それに見事になじんでいるフォーグルマイヤーも、さすがです(「でした」と言うべきなのでしょうか)。

CD Artwork © Österreichischer Rundfunk
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by jurassic_oyaji | 2012-09-04 22:57 | フルート | Comments(0)