おやぢの部屋2
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MENDELSSOHN/Elijah
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Rosemary Joshua(Sop), Sarah Connolly(MS)
Robert Murray(Ten), Simon Keenlyside(Bar)
Paul McCreesh/
Wroclaw Philharmonic Choir & 4 Other Choirs
Gabrieli Consort
SIGNUM/SIGCD 300




2010年から始まったマクリーシュと「ヴラティスラヴィア・カンタンス」とのコラボレーション、今回の「エリア」は、2011年の828日に、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールという巨大なエリアで「プロムス」の一環として開催されました。この作品が1846年にバーミンガムで初演された時と同じ編成を再現、といういつものマクリーシュのコンセプトに基づいて、4管編成、ファースト・ヴァイオリンは24人という巨大なオーケストラに、5つの合唱団の合同演奏という総勢400人を超えるメンバーが集まっています。
前回のベルリオーズも同じような編成でしたが、そのライブ録音は、あまりに巨大な音源だったために、無残な結果に終わっていました。それは、石造りの教会の残響によって、曲のクライマックスではいったい何をやっているのかわからないほどの混沌たる、ほとんど音楽以前のものになってしまっていたのですからね。そこから学習したのでしょうか、今回は本番の演奏の後に、もっと録音に適した別の会場でわざわざCDのためのセッション録音を行っています。さらに、そこにはオルガンはありませんでしたから、オルガンの音だけはまさに初演が行われたその場所であるバーミンガムのタウンホールで録音され、オーバーダビングされました。もちろん、その楽器は初演の時に使われたのと同じウィリアム・ヒルによって制作された、当時のイギリスでは32フィートのストップを持つ唯一のオルガンだったものです。
楽譜に関しては、彼独自の版を作るということはせず、最新のCARUS版(R・ラリー・トッド校訂)と、19世紀の初版(ユリウス・リーツ校訂のBREITKOPF版?)を使って演奏しています。ただ、編成に関しては初演の再現ということで、先ほどのような大人数のものになっていますし、使われている楽器でも、トランペットは「イギリス風のスライド・トランペット」ですし、金管パートの最低音を受け持つ楽器は楽譜で指定されている「オフィクレイド」に、「コントラバス・オフィクレイド」と「セルパン」を重ねています。これらは、ブックレットの写真でその異様な姿を知ることが出来ます。
しかし、テキストに関しては彼なりのこだわりを見せています。旧約聖書に基づいたこの曲のテキストは、ドイツ語版はユリウス・シューブリング、英訳版はウィリアム・バーソロミューが担当しており、初演にはもちろん英訳版が使われたのですが、マクリーシュはその英語のテキストと音楽との間に違和感があるとして、かなりの部分で手を入れています。例えば、8番のアリアでは、元の楽譜では「 I go mourning all day long」だったところを「 I mourn all day and languish」に直す、といった感じですね。ブックレットの対訳では、その部分だけフォントが変えられています。
そんなマクリーシュの意気込みは、今回はCDとしても素晴らしい成果を生むことになりました。なんといっても素晴らしいのは300人を超える合唱です。その人数が産み出すものすごい迫力とともに、決して大味にはならない細かい表情がつけられているのですから、これはすごいものです。そして、その大編成の中からひときわ響き渡るオルガンの超低音には、心底ぶっ飛んでしまいましたよ。これだけの迫力で訴えかける「民衆」の力は、間違いなく伝わってきます。そんな大音響を、ほとんど歪ませることなく収めた録音も、さすがです。ただ、これがSACDであれば、間違いなくワンランク上の音を楽しめるのに、という気持ちはいつもながらついて回りますが。
そんな圧倒的な音圧の部分があるからこそ、合唱団のメンバーによる「天使」のアンサンブルがより美しく際立ってきます。ちょっと張り切り過ぎの「ソリスト」たちよりも、こちらの方がよっぽど心に残ります。でも、エリア役のキーンリーサイドは、しっかりコントロールされた素晴らしい歌でした。

CD Artwork © Signum Records
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by jurassic_oyaji | 2012-09-08 20:05 | 合唱 | Comments(0)