おやぢの部屋2
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アバド13年ぶりの「モツレク」
 日曜日の深夜に、今年のルツェルン音楽祭のライブ映像が、BSで放送されていました。今回のプログラムはモーツァルトの「レクイエム」だというので、とても興味があります。なんたって、指揮者のアバドは13年前に同じ曲をやはりライブ録音しているのですが、それが「版的」にはとんでもないものだったのですからね。それについては、こちらにまとめてありますから、ぜひご覧になってください。とにかく、バイヤー版だと思って聴いているといきなりレヴィン版になったり、その同じ曲の中でもバイヤー版の音形に置きかえられていたりと、これを書きあげるまでには何回繰り返してCDを聴いたことでしょう。
 ですから、あれから13年経って、アバドのこの作品に対する、主に「版」に関してのアプローチがどのように変わったのか、あるいは変わらなかったかが、私の最大の関心事だったのですよ。
 放送では、最初にこの「版」に関してのコメントがテロップで出ていました。
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 つまり、「バイヤー版」と「レヴィン版」を使っているというのですから、おそらく前の演奏と同じことをやっていることが予想されます。ところが、次にこんなテロップが出たのには、驚いてしまいました。
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 「サンクトゥス」はレヴィン版で、それ以外はバイヤー版だと言ってますね。かつてあんなややこしいことをやっていたアバドが、今回はこんなものすごく分かりやすいやり方を取っているのでしょうか。
 でも、このNHKのコメントは全くの嘘っぱちであることが、聴いているうちにすぐ分かります。確かに「サンクトゥス」はまぎれもないレヴィン版ですが、そのあとの「ベネディクトゥス」ときたら、最初はバイヤー版でやっているのに、オーケストラの間奏になったら、そこでいきなりレヴィン版に変わってしまうのですからね。聴きながら気になるところをとりあえずスコアと比べてみただけなので、もしかしたら細かいところでは違っているかもしれませんが、今回のアバドの楽譜は、13年前のあの「いいとこどり」の楽譜そのもののように、私には思えました。NHKが言っているような単純なものでは、決してありませんから、こんなデマに騙されないでくださいね。
 そんな「版」の面白さとともに、これは演奏もとても充実していたのがうれしいところです。まず合唱は、バイエルン放送合唱団とスウェーデン放送合唱団の合同演奏、お気づきでしょうが、どちらの団体もあのペーター・ダイクストラが音楽監督を務めていますね。これはまさに現時点では世界最強のタッグなのではないでしょうか。事実、ひたすら渋い音色で、素晴らしいピアニシモを聴かせてくれるこの合唱団には、もう耳が引きつけられっぱなしでした。
 ソリストも、素晴らしい人が4人揃っていましたよ。一番気に入ったのが、ソプラノのアンナ・プロハスカ。いろんなところで名前は聴いていましたが、実際に聴いた(見た)のはこれが初めてですが、この曲にはぴったりの澄みきった声が良いですね。ただ、ちょっとぶっきらぼうな歌い方をするのが、別の怪しい魅力を放っています。この怪しさが、なんだかジュリエット・ルイスにすごくよく似ていて、ドキドキしてしまいそう。
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 この4人は、ソロはもちろん、アンサンブルがとても素敵でした。
 演奏が終わっても、アバドは1分以上動こうとしませんでした。その間、会場は完全な静寂、これは、ちょっと背筋が寒くなるような体験でした。やっとアバドが指揮棒を降ろすと、盛大な拍手と(一部)スタンディング・オベーションです。カーテンコールではダイクストラも登場、バスのルネ・パーペに比べてもこんなに背が高いんですね。後ろで笑っているのは、バセットホルンを吹いていたザビーネ・マイヤーです。
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by jurassic_oyaji | 2012-09-13 20:44 | 禁断 | Comments(0)