おやぢの部屋2
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Pipe Dreams
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Sharon Bezaly(Fl)
Richard Tognetti/
Australian Chamber Orchestra
BIS/CD-1789




シャロン・ベザリーの最新録音は、ラテンアメリカとオーストラリアという「南半球」の作曲家の作品集でした。録音が行われたのはオーストラリア、まさに世界をまさに(またに)かけて活躍しているベザリーです。とは言っても、リリースされたのは2012年ですが、録音は3年も前の2009年、しかもSACDではなくCDというあたりに、レーベルとしての扱いの軽さを感じるのは気のせいでしょうか。
そうは言っても、ベザリーが今までの数々のアルバムによってフルートのための新しい作品を紹介してくれた功績は、計り知れないものがあります。オーケストラとの協奏曲など、彼女のために献呈されたものは数えきれません。もちろん、なんでもベートーヴェンあたりが最初に始めた手法であるこの「献呈」という制度は、要はその見返りとして作曲家はなにがしかのお金がもらえるというものですから、逆に言えば献呈される演奏家はかなりのお金持ちだ、とも言えるでしょう。「献呈料」の相場がいくらなのかは知る由もありませんが、それによってフルーティストのレパートリーが増えるのですから、ありがたいことです。
ここでは、弦楽合奏とフルートのための協奏曲が4曲演奏されています。その中の1曲は彼女に献呈されているもの、そしてもう1曲は改訂版が彼女に献呈されています。その献呈曲は、1938年生まれ、指揮者としても知られているウルグアイ生まれ(両親はロシア人とポーランド人)の作曲家、ホセ・セレブリエールの「Flute Concerto with Tango」です。「タンゴ」と聞いて何か軽めの曲を連想するかもしれませんが、実際はタンゴらしきものが引用されている部分があるだけで、あのリズミックな音楽がベースになっているわけではありません。それよりは、もっぱらベザリーの華麗なテクニックをいかんなく披露するといった面に眼目が置かれているような印象を強く与えられる作品です。もちろん、彼女は循環呼吸をいたるところに使いつつ、目の覚めるような演奏を聴かせてくれます。
次のアディナ・イザラという、1959年生まれのヴェネズエラの女性作曲家の「Pitangus Sulphuratus」という曲のタイトルは、カラカスあたりに生息する鳥の学名なのだそうです。1987年にヴェネズエラのフルーティスト、ルイス・フリオ・トロに「献呈」されたものですが、1993年にはベザリーの「前任者(笑)」であるマニュエラ・ヴィースラーによってBISレーベルに録音されていました(CD-689)。
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鳥の名前がタイトルというと、あのオリヴィエ・メシアンを思い浮かべてしまいますが、この曲でもそんな鳥の声の模倣が最初から現れます。さらに、やはりメシアンっぽい大胆な変拍子もあちこちで使われています。ただ、弦楽器の薄い不思議な響きの中でフルートが物憂げに漂うシーンは、この作曲家独自の世界でしょう。この曲には、演奏者が自由に即興演奏を行うカデンツァの部分が用意されています。ヴィースラーは、そこでは現代奏法を駆使した見事なカデンツァを披露していましたが、今回のベザリーの録音にあたっては、そのカデンツァまでもしっかり作ってもらった「改訂版」を「献呈」してもらいました。これもやはり、彼女のテクニックを見せびらかすには格好の仕上がりです。
オーストラリアの作曲家カール・ヴァイン(1954年生まれ)が2003年に作ったアルバムのタイトル曲「Pipe Dreams」は、それこそピアソラの「タンゴ」のような、リズム感の中にも特徴的な和声を感じさせるものです。古典的な急-緩-急という3つの楽章で出来ていて、両端の楽章には同じテーマが使われています。
この中では唯一の物故者、1916年生まれのアルゼンチンの有名な作曲家、アルベルト・ヒナステラの「Impressiones de Puna」は、2分程度の短い曲が3つ集まったかわいい作品で、最後には聞き覚えのあるフォルクローレのメロディが現れます。

CD Artwork © BIS Records AB
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by jurassic_oyaji | 2012-09-30 20:30 | フルート | Comments(0)