おやぢの部屋2
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BARBER/An American Romantic
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Craig Hella Johnson/
Conspirare
HARMONIA MUNDI/HMU 807522(hybrid SACD)




サミュエル・バーバーの合唱曲を集めたアルバムです。バーバーの合唱曲と言えば、あの超有名なヒーリング・ピース「弦楽のためのアダージョ」を自ら混声合唱に編曲した「Agnus Dei」ぐらいしか知られてはいないのでしょうが、実は伝統的(=ロマンティック)な手法に根差した何曲かの作品が残されています。それらの大部分が、おそらくこのアルバムでは聴くことが出来るのでしょう。
演奏しているのは、アメリカのプロフェッショナルな合唱団、「コンスピラーレ」です。すでに何枚かのSACDをここでご紹介したことがありますが、それらは演奏、録音ともに決して満足のいくものではありませんでした。にもかかわらず、性懲りもなく買ってしまったのは、このアバウトな合唱団がバーバーを歌ったらどういうことになるのか聴いてみたい、という好奇心からです。
1曲目の「Twelfth night」から、この合唱団の張り切り過ぎがもろに感じられてしまって、ちょっと暗澹たる気分になってしまいます。録音もやはり余裕のないもので、フォルテッシモにでは完全に音が濁っています。とてもSACD対応とは言えないお粗末な録音、やはり、今回も期待はできそうにありません。ただ、次の「To be sung on the water」では、ピアニシモでとても繊細な響きが出ているのに、少し意外な思いです。このあたりの、冷静にピッチをしっかり合わせるというスキルは、もしかしたらかなりなものなのかもしれない、と、ちょっと見直したくなるほどの響きです。
しかし、その次の曲、女声だけによって歌われる「The virgin martyrs」になって、女声パートが裸になってしまうと、その不安定さはもろに暴露されてしまいました。音程は悪いしビブラートは深いし、これではどこぞのおばちゃんコーラスと大して変わりません。いくらバーバーとは言え(それは「ババー」)。
一方の男声だけ、という曲もありました。「A stopwatch and an ordnance map」という、ティンパニが伴奏の勇ましい曲です。ここで聴かれる男声は、確かに迫力もありハーモニーもきれいです。ただ、その中にまるでジャズ・コーラスのような、ちょっとしたなよなよしさが漂っているのが気になります。何かワンクッションおいて表現しているというもどかしさがあるのですね。それはそれで、一つのエンタテインメントのテクニックではあるのですが、男声合唱としてのストレートさを期待している時には歯がゆさを感じないわけにはいきません。
そんな風に、はからずも、それぞれのパートをさらけ出すことによって、この合唱団のキャラクターがより明らかになったところで聴いた、「Agnus Dei」は、やはり予想していた通りの残念な出来でした。冒頭の入りからして、何の重みも感じられないノーテンキな軽さに支配されているのですから、これでは「ヒーリング」にすらなりえない、ただの無神経な音の羅列です。その調子で迎えるクライマックスがどんなものなのかは、おのずと想像がつくことでしょう。
後半では、「The lovers」という、オーケストラと合唱のための大曲が演奏されています。ただし、ここではそのオーケストラを、各パート1人という薄い編成に直したロバート・キアのバージョンが用いられています。どうでもいいことですが、その編成による、これは「世界初録音」なのだそうです。
この作品自体は、ソロあり合唱ありと、まるでミュージカルのようなヴァラエティあふれるものです。1曲目にその室内オーケストラだけによって「Prelude」が演奏されるのですが、これが今まで聴いてきた合唱とは次元の違う繊細さを持っていました。それぞれのプレーヤーの思いが、きっちり一つに収束しているのですね。これが聴けたのが、このアルバムの最大の収穫だったというのは、皮肉なことです。
最後はやはりこの編成で「Easter Chorale」。このバーバーらしからぬ華やかさが、おそらくこの合唱団には最も合っていたのでは、と思えるのですから、困ったものです。

SACD Artwork © Harmonia Mundi USA
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by jurassic_oyaji | 2012-10-02 22:56 | 合唱 | Comments(0)