おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
Rodgers & Hammerstein at the Movies
c0039487_20592838.jpg
Sierra Bogges, Anna-Jane Casey, Joyce DiDonato
Maria Ewing, Julian Ovenden, David Pittsinger
Maida Vale Singers
John Wilson/
The John Wilson Orchestra
EMI/3 19301 2




イギリスの指揮者ジョン・ウィルソンが1994年に作った「ジョン・ウィルソン・オーケストラ」は、ジャズのビッグバンドをベースに、シンフォニック・オーケストラの規模のストリングスを加えた団体です。このCDのためのメンバー表がブックレットに載っていますが、その人数は103人、たくさんの人が集まったなんとも贅沢な陣容からは、まさにゴージャスそのもののサウンドが醸し出されることでしょう。
このオーケストラがブレイクしたのは、2009年の「プロムス」でした。ロイヤル・アルバート・ホールで行われた「雨に歌えば」とか「オズの魔法使い」といった、MGMのミュージカル映画の古典とも言われる作品の音楽を演奏したコンサートが大ヒット、それはもちろんBBCによって放送されただけではなく、その後にイギリス全土を回るツアーまで敢行されることになりました。
2010年の「プロムス」では、今度はFOXによって映画化されたリチャード・ロジャースと、オスカー・ハマースタイン・ジュニアのブロードウェイ・ミュージカルが取り上げられました。このCDには、その時と同じ演目、「オクラホマ!」、「回転木馬」、「南太平洋」、「王様と私」、そして「サウンド・オブ・ミュージック」からのセレクションが収録されています。
などというゴタクは、実は手元にCDが届いてから知ったこと、これを聴こうと思ったのは、ひとえにこの間の「ドン・ジョヴァンニ」で素晴らしい歌を聴かせてくれていたジョイス・ディドナートが歌っているからでした。その他に知った名前といえばマリア・ユーイング、こちらは最近あまり名前を聴かなくなった人ですが、元気にやっているのでしょうか。この二人はれっきとした「オペラ歌手」ですが、その他の女声2人、男声2人はおそらくミュージカルで活躍している人たちなのでしょう。そういえば、この中で一番出番の多いサラ・ボッゲスという名前をどこかで聴いたことがあると思ったら、こちらの「オペラ座の怪人」でクリスティーヌを歌っていたのでしたね。
このオーケストラのコンセプトは映画のサウンド・トラックと同じオーケストレーションによって、懐かしいミュージカル映画のサウンドを現代に再現する、というものです。そのために、オリジナルのスコアが残っていないものは指揮者のウィルソンなどの手によって「修復」されています。
まずは、それぞれのミュージカルの「序曲」が演奏されます。その「修復」の成果は素晴らしいもので、かつて映画館で見たそれらの映画のバックに流れていた、まさにそのままのサウンドが響き渡るという幸せな体験・・・が味わえるはずだと思ったのですが、なにかが違います。これはいったいどうしたわけなのでしょう。しばらく聴いていると、その原因が分かってきました。このオーケストラは確かにスコア通りの音を出してはいるのですが、そこにはサウンド・トラックにはあったはずの「生々しさ」がまるで欠けているのですね。この、ウィルソンが集めた精鋭ぞろいのメンバーたちは、「うますぎる」のですよ。サントラの演奏というのは、よく聴いてみるとかなりいい加減、演奏も録音もいかにもやっつけ仕事という感じのする粗っぽいものなのですが、逆にその「粗さ」と一緒になった体験が、映画そのものの体験として刷り込まれてしまっていたことに気付かされたのです。このCDの演奏は、まさに洗練の極みです。あまりに贅沢な不満ですが、こんなものは映画音楽ではありません。
ディドナートが歌っていたのは「You'll Never Walk Alone」と、「Climb Ev'ry Mountain」。いずれもお年寄りが若者に助言するというシチュエーションでのナンバーですが、彼女の圧倒的な存在感は映画以上の感動を与えてくれました。それに対して「Bali Ha'i」を歌っていたユーイングは、全く精彩に欠けています。

CD Artwork © EMI Records Ltd.
[PR]
by jurassic_oyaji | 2012-10-08 21:03 | オペラ | Comments(0)