おやぢの部屋2
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Harmonia Ensemble
BRAIN/OSBR 29010




日本のアマチュア合唱界の雄、ハルモニア・アンサンブルが、昨年リリースしたCDに続いて、またもやニュー・アルバムを出してくれました。なんでも、前のCDは合唱ものとしては異例のセールスを記録したそうですね。確かに、これは最近にない満足のいく音楽を届けてくれた素晴らしいものでした。それから丸1年たってのこのCDは、前作以降のコンサートでのライブ・レコーディングを集めたものです。
この中には、なんと、昨年の11月に青森市で行われた全日本合唱コンクール全国大会で演奏されたものまで入っています。なんか、とても身近なところでの音源がこんな形で発表されるなんて、ちょっと変な気がしてしまいます。
そのほかは、自前のコンサートでの録音です。まずは、相澤直人という、以前のアルバムにも登場した若い作曲家の新作「宿題」では、まさに今の合唱界の潮流そのもののような「聴きやすい」音楽が、完璧なディクションとハーモニーで演奏されています。その中に、ちょっとこの合唱団には似合わないポルタメントが出てきますが、おそらくこれはきちんと指定されたものなのでしょう。
それに続いて、今度は1970年代の作品、柴田南雄の「追分節考」という懐かしい「シアターピース」が聴かれます。作品自体は、当時の「前衛」であったものが、時を経て新たな魅力を加えられた、という素晴らしい演奏です。ほんと、これは初演を行った田中/東混の、ある意味「権威的」な演奏からの呪縛を、気持ちがいいほど解き放っています。こうして、この作品はまた別のファンを生むことになるのでしょう。
そして、アルバムタイトルの「翼」を含む、武満徹の「うた」からの数曲です。ほとんど「鼻歌」に近いほどシンプル(言い換えれば「稚拙」)なメロディをまるで作曲者自身が恥じているかのように、大仰な編曲で覆い隠すという屈折したこの作品を歌う時には、多くの合唱団はその「隠れ蓑」に惑わされてしまいがちです。複雑に入り組んだ和声にばかり目が行ってしまって、結局「現代音楽」みたいな仕上がりになってしまうと。しかし、この合唱団はそんな武満の企みなどお構いなしに、あくまでそのメロディを、あるがままに聴かせようとしています。これは、かなりすごいこと、そこからは、「鼻歌」がまさに「鼻歌」として聴こえてくると同時に、武満が施した姑息な手段までもが透けて見えてくるというとてつもない仕上がりが達成されてしまっています。
そんな「最近」の作品ばかりが集められた日本人作曲家のパートを経て、ヨーロッパの古典を取り上げた後半に入ったとたん、それまであふれるほどに感じられたエネルギーがスッパリとなくなってしまったのはなぜでしょう。まず、少人数の編成でのモンテヴェルディが、ひたすら中に向いた表現に終始しているのに、戸惑わされます。そして、コンクールの自由曲として演奏されたバッハのモテット(オルガンの伴奏が入っていますが、サンプリング・キーボードを持ってったのでしょうか)も、真っ向からバッハに挑もうとしている気持ちは痛いほど伝わってくるのに、演奏が全然面白くないのですね。聴衆に向けてではなく、あくまで審査員に向けての演奏だったことも、そのつまらなさに拍車をかけていたのでしょうか。
ただ、定期演奏会で演奏されていたブルックナーでも、そんなつまらなさしか味わえないとなると、事態は深刻です。彼のモテットの中には、あの巨大なシンフォニーのエキスが詰まっています。この曲から「ブルックナーらしさ」を引き出すことが出来るようになりさえすれば、おのずと「バッハらしさ」や「プーランクらしさ」も備わった演奏ができるようになるのではないでしょうか。いや、そんなことになってしまったら、もうこの合唱団にはだれも「勝てなく」なってしまいます。

CD Artwork © Brain Company, Limited
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by jurassic_oyaji | 2012-10-12 20:04 | 合唱 | Comments(0)