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MAHLER/Totenfeier, Lieder eines fahrenden Gesellen
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Sarah Connolly(MS)
Vladimir Jurowski/
Orchestra of the Age of Enlightenment
SIGNUM/SIGCD 259




マーラーが1888年に作った交響詩「葬礼」のCDです。もちろんこの作品は1894年に完成する「交響曲第2番」の第1楽章として、今では多くの人に知られています。1990年に若杉弘と東京都響が録音したものを始め、現在では多くのCDが出回っていますから、マーラー好きの人なら一度は聴いたことがあるのではないでしょうか。そして、その最終の形である交響曲での第1楽章との細かな違いについても、ご存知の方は多いことでしょう。
もしご存じない方のために、その「違い」について一言。まず、「尺」そのものが変わっているところが2か所あります。最初は、練習番号13番(208小節目)から始まるフルートの大ソロが終わる少し前の222小節目(14番の4小節前)から16番の前の253小節目までの32小節が、26小節増えて58小節になっています。もう1か所は19番の先の「Nicht eilen」の前が2小節増えています。ただし、この2小節には「vi - de」(この間はカットしても構わない)という表記があります。いや、正確には、それらの逆の作業をマーラーは行って、「葬礼」から「交響曲第2番」へと改訂したことになるのですが。。
そのほかにも、細かい音型が異なっていたり、オーケストレーションが違うところはたくさんあります。打楽器などは、かなり違っています。特にシンバルは目立つので、違いがよくわかります。
今回、ユロフスキが指揮をしているのは、1986年に設立されたピリオド楽器のオーケストラ「エイジ・オブ・エンライトゥンメント管弦楽団」。つまり、これはピリオド楽器によって最初に録音された「葬礼」ということになります。いや、実際は、ほかの交響曲でもモダン・オーケストラによる「ピリオド・アプローチ」という「まがい物」(その最たるものが、ノリントンとシュトゥットガルト放送交響楽団のツィクルスでしょう)はあっても、ちゃんとした「ピリオド」はヘレヴェッヘの「4番」ぐらいしかないのですから、これは貴重なものです。
実際、およそ120年も前に作られた曲なのですから、使われている楽器は今とは微妙に異なっています。フルートあたりは、この時期のマーラーの指揮のもとではまだベーム管ではなく円錐管が使われていたはずです。確かに、先ほどの208小節から始まる大ソロなどは、ここではいかにもバランスが悪く聴こえてしまいます。それと、特徴的なのがハープの音色です。モダン・オケの中でのハープの音には、なにか無理をして強い音を出している、という印象があったものですが、ここではそんなことはなく、ハープ本来のサロン風の優美さが見事に聴こえてくるものでした。おそらく、弦の材質が違っているのでしょう。弦楽器も、やはりガット弦なのでしょう、どんなに強い音でも決して暴力的にならない、柔らかい響きがとても魅力的です。
実は、ユロフスキが演奏している「交響曲」は、以前聴いたことがありました。今回は、それに比べると全く異なる印象が与えられたのには、ちょっと驚いてしまいました。ロンドン・フィルとの時にはかなり攻撃的でついていけなかった部分が、このOAEではすっかりなくなっているのですね。逆に、こちらではあまりの軽さに、マーラーらしさが感じられないほどでした。でも、マーラーの時代には、このぐらいで十分にインパクトがあったのかもしれないのかも、などと思ったりもします。
カップリングの「さすらう若人の歌」(これは、コノリーが張り切り過ぎで、ちょっと引いてしまいます)と合わせても、38分しか入っていないので、価格も通常版の半分というのは、ありがたい配慮です。シグナム(シングル)CDですね。

CD Artwork © Signum Records

by jurassic_oyaji | 2012-10-18 20:45 | オーケストラ | Comments(0)