おやぢの部屋2
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SMETANA/The Barterd Bride
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Dana Buresová(Marenka), Tomás Juhás(Jenik)
Josef Benci(Kecal), Ales Verácek(Vasek)
Jirí Belohlavek/
BBC Symphony Orchestra
HARMONIA MUNDI/HMC 902119.20




スメタナの「売られた花嫁」という、なんだか人身売買か美人局のような恐ろしいタイトルのオペラは、もちろんそんな変な「邦題」から連想されるような暗~い内容ではなく、もっとあっけらかんとした言わばドタバタ・コメディ、最後には愛し合うものがめでたく結婚できるハッピーエンドを迎えるお話です。というより、「チェコの国民的オペラ」と呼ばれるこの作品は、もう少し前の時代の「オペラ・ブッファ」そのものの形式を踏襲しているようにさえ思えます。「実は、私はあなたの息子なんです」などという、モーツァルトの「フィガロの結婚」にも似たようなオチがある他愛のない物語を、レシタティーヴォ、アリア、アンサンブル、そして合唱を連ねて進行させる、極めて古典的な音楽劇そのものの形をとっていながら、その音楽にはチェコ独特の情緒にあふれたフレーズに彩られているとても楽しいものです。
日本で、このオペラの人気が高まったのは、おそらく1965年にNHKが招聘した「スラブ・オペラ」のおかげではないでしょうか。その時には、「ボリス」、「イーゴリ公」、「オネーギン」といった格調高いロシア・オペラに混じって、唯一「軽め」のこのチェコ・オペラが上演されていました。もちろん、それらはすべてNHKのテレビで繰り返し放送されましたから、そこでこの作品の魅力にとりつかれた人も多かったはずです。
その割には、このオペラは、最近では録音にはあまり恵まれてはいないようです。一番新しい全曲盤は、おそらく2005年にリリースされたマッケラス指揮のCHANDOS盤でしょうが、これはチェコ語ではなく、英語で歌われているものでしたね。なんでも、チェコ語による録音は、1981年のコシュラー盤(SUPRAPHON)以来全く行われていないそうなのですね。それが、今回30年ぶりに最新のチェコ語盤の登場です。とは言っても、これはこのオペラがコンサート形式で演奏された時にBBCが放送用に録音したものを転用してCDにしたものです。音を聴く限りこの前のRAIの録音のような会場ノイズは全く聴こえませんし、残響の感じもなんだか空席のホールのようですので、おそらくゲネプロなどを編集したものなのでしょう。いや、実際この録音はCDにしておくにはもったいないほど素晴らしい音ですから(このレーベルは、SACDから撤退したという噂は本当なのでしょうか)かなり手間をかけて収録されたものなのでしょう。
演奏しているのは、ビエロフラーヴェク指揮のBBC交響楽団、歌手は全員チェコかスロバキアの人たちです。2011年5月の録音当時はこのオーケストラの首席指揮者だったビエロフラーヴェクも、今では古巣のチェコ・フィルのシェフに舞い戻っていますから、またとないタイミングで録音できたことになります。そんな、いくつもの要素が重なって素晴らしい全曲盤が完成しました。
オーケストラは、有名な序曲にしても、劇中に演奏されるダンスにしても、とことんドライブ感にあふれた演奏を聴かせてくれます。それは、チェコの指揮者がチェコの音楽を指揮することへの期待を見事に裏切ったもののようにも感じらます。いや、もしかしたら、これがスメタナが求めた、民族的な素材を使って、全世界に通用する音楽を作るということだったのでは、と思わせられるような、まさに「世界標準」とも言える音楽がここからは聴こえてきます。
全曲を聴いたのは、それこそ「スラブ・オペラ」以来だったのですが、信じられないことに、アリアの細かい部分までしっかり記憶に残っていて、とても楽しめました。ただ、そうなってくると、以前はフラーニョ・パウリックという人がとてもエモーショナルに歌っていた「うすのろ」のヴァシェクの役は、ここではイケメンのイェニークを歌っている人の方が適役なのではないか、などといういえにくい(言いにくい)おせっかいをさしはさみたくなってしまいます。

CD Artwork © Harmonia Mundi s.a.
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by jurassic_oyaji | 2012-12-25 20:22 | オペラ | Comments(0)