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Pater Noster:A Choral Reflection on the Lord's Prayer
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The King's Singers
NAXOS/8.572987




NAXOSというレーベルは全世界でCDを制作していますが、これはアメリカで制作されたもの。録音場所はナッシュビルの教会、アーティストはあのキングズ・シンガーズです。キングズ・シンガーズと言えば今まではEMIRCAなどのメジャーどころを遍歴、やっと最近イギリスのSIGNUMに落ち着いたという印象がありますが、まだこんなやくざなレーベルと浮名を流そうとしているのでしょうか。そういえば、彼らにはTELARCとたった一度だけの関係を持ったという「過去」がありましたね。
NAXOSとの関係が単なる火遊びなのかどうかは分かりませんが、彼ら自身が新たなパートナーと再出発したというのは本当のことです。このグループに19年間在籍していたバリトンのフィリップ・ローソン(禿げ頭の人ですね)に代わって、新たにグループ史上初となるイギリス人以外のメンバーが参加することになったのです。その人は、ニュージーランド出身のクリストファー・ブルーアートン。写真を見ると、赤ちゃんではなく(それは「乳児ランド」)いかにも爽やかな好青年、平均年齢もかなり下がったことでしょう。
彼が正式にシンガーズの一員としてデビューしたのは、2012年2月に行われたオーストラリアのアデレードでのアデレード交響楽団とのコンサートでした。しかし、彼はその前にも、SIGNUMから2012年にリリースされた「Royal Rymes & Rounds」というアルバムのための2011年7月のセッションにも参加して、メンバーに馴染むように努力していたようです。ただ、その時には、まだ前任者のローソンがいましたから、彼はアルバムの23曲中の2曲で実際に歌っているだけでした。ですから、このNAXOSのアルバムが、彼にとっての実質的なデビュー作となるのでしょう。
このアルバムのコンセプトは、タイトルの通り、新約聖書の「マタイによる福音書」の第6章にあるイエスの言葉、「Pater Noster」で始まるいわゆる「主の祈り」が、古今の合唱音楽に反映された諸相を眺めてみよう、というものなのでしょう(このテキストは「ルカによる福音書」の第11章にも登場しますが、このアルバムのブックレットにはそれが「第2章」となっています。どこまでもいい加減なNAXOSです)。
まず最初に、ユニゾンでプレーン・チャントの「Pater Noster」が歌われた後、古くはジョスカンから、まだ存命中のタヴナーまで、全部で20の作品が歌われます。このグループは、ライブなどではとてもサービス精神に富んだエンタテインメントを繰り広げてくれますが、やはり根っこはこのようなシリアスな曲なのだったのだなあ、と、つい感慨深げになってしまいます。しかし、そんなくそまじめな曲の中にも、彼らはとても豊かな表現力を駆使して、作曲家の「肉声」に迫ろうとしています。それは、もしかしたら「正当」からはちょっと離れたアプローチなのかもしれませんが、聴く者にとってはとても楽しめるものです。ほんと、最後に置かれたラッススの「Ad te levavi」でのドラマティックな表現には、思わず引きずり込まれてしまいます。
最近の作品では、そんな「肉声」がよりリアリティをもって迫ってきます。プーランクの「4つの小さな祈り」では、この編成ならではのかゆい所に手が届く様な心憎いまでの細やかな表現が光ります。さらに、ルネサンスのコンテクストの中で、この曲をまさにハーモニーを最大限に大切にして演奏していることも良く分かります。それがさらに昇華されたデュリュフレの「Notre Père」は絶品です。
最後にもう1度プレーン・チャントが演奏される時には、主音が最初の時より全音高くなっているだけではなく、なんとそれは輝かしいカウンター・テナーに彩られたオクターブ・ユニゾンに形を変えていました。アルバムを頭から続けて聴けば、それがどういう意味を持つのかはおのずと分かるはずです。アーメン。

CD Artwork © Naxos Rights International Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2012-12-27 20:28 | 合唱 | Comments(0)