おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
BEETHOVEN/Symphonies 5 & 7
BEETHOVEN/Symphonies 5 & 7_c0039487_20523527.jpg



Jonh Eliot Gardiner/
Orchestre Révolutionnaire et Romantique
SDG/SDG 717




ガーディナーとORR1991年から1994年にかけて様々な場所でのライブ録音も含めてベートーヴェンの交響曲全集を録音していました。当時のレーベルは、もちろんDGのサブレーベル、ARCHIVでしたね。このレーベルは、本来はバロック以前の音楽を専門に扱っていたものでしたから、ぎりぎりモーツァルトぐらいはカタログにありましたが、ベートーヴェンまでも含めるようになったのは、レーベルの性格がそれまでの「研究」的なものから、もっと普遍的なものに変わらざるを得なかったからなのでしょう。ただ、あくまでピリオド・オーケストラの演奏に限っていたあたりが、レーベルの意地だったのでしょうか。
そのDGと袂を分かったガーディナーが、20年近く経って自分のレーベルSoli Deo Gloriaにベートーヴェンの交響曲を新たに録音しました。これは、201111月にニューヨークのカーネギーホールで行われたコンサートのライブ録音です。ただ、これも最近ここで取り上げることの多い、放送局が自分の番組のために制作したものをCDにしたというものです。実際にマイクを立てて生放送を行ったのは、「WQXR」という、ニューヨークの老舗クラシック専門FM局のスタッフで、このレーベルのいつものエンジニアは、その録音ソースの編集やマスタリングを担当しただけなのでしょう。楽章間のどよめきなどははっきり聴こえますが、最後の拍手は、きれいになくなっています(放送では、もちろんきちんと流したのでしょうね)。そんな、「たまたま」あった機会に乗ってリリースしたCDなのでしょうから、これがさらに2度目の全集に発展するかどうかは、分かりません。
彼らのARCHIV時代の全集の録音が終わった直後の1996年に、例の「ベーレンライター版」の刊行が敢行されたのは、偶然ではありません。この楽譜の校訂を行ったジョナサン・デル・マーは、単に古文書をひもとく様な学究的な作業だけではなく、その頃のピリオド・オーケストラの演奏家たちとも密接にコンタクトをとって、実践的な面からもアプローチを行っていましたが、ガーディナーたちもそんなスタッフの一員だったのですね。ですから、当時の全集に向けての演奏の中には、逆にデル・マーの研究成果も反映されていたはずです。ただ、「5番」に関してその頃問題になっていた「第3楽章のスケルツォでは、トリオが終わった後に頭までリピートするのかどうか」という点に関しては、ガーディナーは「リピートあり(S-T-S-T-S')」という方針をとっていたようです。しかし、1999年に出版されたデル・マー校訂の「5番」の楽譜では、その点については「証拠不十分」ということで従来通りの「リピートなし(S-T-S')」になっていましたね。
今回の録音には、明確に「Edition:Bärenreiter」というクレジットがありました。ですから、当然前の録音の後に出版された楽譜に従って「リピートなし」で演奏していると普通は思うものですが、そうではありませんでした。以前と同じ「リピートあり」だったのですね。だったら、そんなクレジットは載せなければいいものを、とは思いませんか?実際、ピリオド楽器で演奏された場合、トリオの最後に出てくるフルートの高音のソロはちょっと辛そうに聴こえるものですが、ここでのソリストはとびきり悲惨、それを2度聴かされるのはちょっとした苦痛です(ブライトコプフの新版には「アド・リブ」の注釈つきでリピートの指示があります)。
とは言っても、この演奏全体は、まさにライブ録音ならではの熱の入ったものでした。特にトランペットやホルンの生き生きとしたドライヴ感には圧倒されます。それに触発されたのでしょうか、「5番」のフィナーレでは、最後から2番目のアコードで、ピッコロが1オクターブ高い「C」をものの見事に決めています。もちろんこれは楽譜にはないスタンドプレーですが、それはさっきのリピートの問題とは全く次元の異なる話です。

CD Artwork © Monteverdi Productions Ltd
by jurassic_oyaji | 2012-12-29 20:54 | オーケストラ | Comments(0)