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BACH/Une Cantate Imaginaire
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Nathalie Stutzmann(Alt)
Nathalie Stutzmann/
Mikaeli Kammerkör
Orfeo 55
DG/481 0062




フランス東部、ベルギー、ルクセンブルクそしてドイツとの国境に近い街メスには、1989年に新しく出来た素敵なコンサートホール「Arsenal(アルセナル)」があります。浮気の現場を見つかった人はアセルナリ。いや、文字通り、元は19世紀に作られた武器庫だった建物を改装して、ステージの前と後ろに階段状の客席を配置した小ぶりのホールですが、音響が素晴らしいので、コンサートだけではなくレコーディングにもよく使われている、お馴染みのところです。ブックレットには写真が載っていますが、その特徴あるステージの配置は一度見たら忘れることはありません。
そんな場所で録音されたのが、アルトのナタリー・シュトゥッツマンの「弾き語り」によるバッハのカンタータです。まず、「弾き語り」というのが気になりますが、実はシュトゥッツマンは以前から歌手としてだけではなく、指揮者としても活躍したいと考えていたそうなのです。そこで彼女は、二人の指揮者、フィンランドのヨルマ・パヌラと、日本の小澤征爾の許で指揮者としてのトレーニングを受け、ついに2009年に自分のオーケストラを設立します。それが、このCDでも演奏している「オルフェオ55」というアンサンブルです。彼女は、25年間このアンサンブルの客演指揮者としてのポストを約束されているのだそうですよ。この団体は基本的にピリオド楽器奏者の集まりで、バッハあたりが主要なレパートリーなのでしょうが、そのレパートリーはさらなる広がりを見せ、最近ではR.シュトラウスの「メタモルフォーゼン」などのような時代の作品や、さらにはシェーンベルクなどもすでに演奏しているのだそうです。
このCDでは、「穏当に」バッハの「カンタータ」が演奏されています。とは言っても、それは普通に何曲かのカンタータを演奏するというのではなく、彼の200曲を超えるカンタータからアルトのためのソロを集めて一つの長大な「カンタータ」をでっち上げた、というものです。名付けて「イマジナリー・カンタータ」、現実には存在していない、「想像上のカンタータ」ということですね。その間には、オーケストラだけによる「シンフォニア」も何曲か演奏されていて、そこではシュトゥッツマンはまさに「指揮者」としての顔を見せているわけですね。
その「シンフォニア」は、単に「序曲」という意味だけではなく、ボーカルだけのプログラムに変化を与えるためのインスト物としての役割も果たすかのように、あちらこちらに配置されています。中には、組曲第3番の中の「アリア」のような、表面的にはカンタータとは何の関係もないような曲まで含まれています。しかし、同じように、今度はブランデンブルク協奏曲の第3番の第1楽章が聴こえてきたので、何事かと思えば、それはカンタータ174番のシンフォニアでした。確かに、キーやサイズは同じですが、よく聴いてみるとアレンジが違っています。
そんな風に、ここでシュトゥッツマンはバッハの創作上の常套手段であった「パロディ」を分かりやすい形で提供しているように思えてしまいます。彼のカンタータには、すべての作品からのエッセンスが集約されていることを、こんな形で明らかにしようとしたのでしょう。
それは、この「イマジナリー・カンタータ」の中では唯一の合唱曲であるカンタータ191番が、「ロ短調ミサ」のパロディだというところにも表れています。ただ、この「ミカエリ室内合唱団」を聴くのはこれが2度目ですが、相変わらずのユルさには、ちょっとがっかりです。
もっとがっかりしたのは、シュトゥッツマンの指揮ぶりです。なんとも一貫性のないその場しのぎの表現があちこちで見られるのには、ほとほと閉口します。歌手としてこれだけの名声を得ているというのに、なぜこんな中途半端な仕上がりにしかならない指揮者の道へ進もうとしているのか、とても理解できません。

CD Artwork © Universal Music Classics & Jazz France
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by jurassic_oyaji | 2013-01-02 20:23 | 合唱 | Comments(0)