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新国立劇場 名作オペラ50鑑賞入門
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公益財団法人新国立劇場運営財団監修
世界文化社刊
ISBN978-4-418-12001-7



新国立劇場が出来てから、15年経ったのだそうですね。日本にまともな「オペラハウス」が出来てから、まだたったの15年しか経っていないのはちょっとした驚きです。いや、確かにそれまでにもオペラを上演出来るホールはいくらでもありましたし、本来はオペラには向かないホールでも強引にオペラをやってしまうというケースだって、日常茶飯事でした。さらに、オペラを専門に上演するための団体、というのも実際にいくつか存在はしていました。しかし、外国の文化を取り入れることにかけては他に類を見ない日本人が、外国ではどんな小さな町にでも必ず1つや2つはあるという、定期的にオペラを上演するだけのために作られた施設が、ほんの15年前には全くなかったことは、かなり不思議だと言えないでしょうか。
それはともかく、そのまともなオペラハウスは、いつの間にかオペラの有名な演目をほとんど上演してしまうほどの実績を作り上げてしまっていました。そこで、こんな、自分の劇場で実際に上演したものだけを集めて、オペラを語る上では欠くべからざるレパートリーをすべて網羅した本まで作れるようになったのですから、すごいものです。そう、この本は、単なる「オペラ入門書」などではなく、「たった」15年の間にここまでのレパートリーを備えてしまった新国立劇場の「実績」を、日本のオペラ・ファンに知らしめるものだったのです。
本の体裁としては、いかにも「入門書」っぽいものには仕上がっています。それぞれのオペラに関する基礎的なデータとあらすじ、そして登場人物の「相姦図」、いや、「相関図」などと、どこにでもあるものの羅列のように見えます。いや、実際これらの部分は、多くが今までに出版されていたこの手のガイドブックの内容をそのまま引き写したものになっているようです。ちょっとした間違いなどもすぐに見つかりますが、おそらくそれらは元のものをきちんと精査せずにそのまま引用した結果なのでしょう。
しかし、その中に登場する写真が、すべてこの新国立劇場で上演されたものであることを知れば、やはりそこからは殆ど感動と言っても差し支えないほどのものがわき上がってくることでしょう。そして、そこに付けられた演出家や歌手に対するコメントこそが、まさに実際にそこで上演された証として強いインパクトをもって迫ってきます。それは、いつの間にか世界水準のオペラ公演が日常的に行われるようになっていたことを物語るものに他なりません。
とは言っても、その華やかな写真の中に、明らかに西洋文化の粋であるオペラという芸術にふさわしくない顔立ちのキャストを見つけたりすると、そんな感動も失望に変わります。これは、舞台芸術であるオペラの宿命、関係者は、西洋人が作りあげたステージに東洋人が立つことへの違和感は、厳然と存在している事実を直視するべきです(そういう意味で、昨夜放送された「ニューイヤーオペラコンサート」ほどおぞましいものもありません)。
それと、いくら入門書のコピペがあったとしても、実質的にこの劇場のPRのためのブックレットに過ぎないものを、税込4000円という高額で売りつける神経は、どこか狂っています。実は、「おまけ」のDVDはかなり興味深く見ることが出来たのですが、それも、ウェブサイトで誰でも見ることができる動画の抜粋でしかなかったことを知って、心底失望させられましたし。
例えば、本文に見られる断片的なデータだけではなく、この15年間に上演されたオペラの一覧表(もちろん、演出家や歌手の名前が網羅されたもの)などを加えただけで、この本はその価格に見合うだけの価値を持つはずだったのに、それを怠った編集者の勘違いが悔やまれます。

Book Artwork © Sekai Bunka Publishing Inc.
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by jurassic_oyaji | 2013-01-04 20:58 | 書籍 | Comments(0)