Jörg Baumann(Vc)
Klaus Stoll(Cb)
CAMERATA/CMBDM-80001(BD)
現代のレコーディングの現場では、
30年以上前に
CD(コンパクト・ディスク)の規格として制定された
16bit/44.1kHzという解像度の
PCMなどはすでに使われることはなく、
CDを制作する際にはまず高解像度のスペック(具体的には、
24bit/48-192kHzの非圧縮
PCMもしくは
1bit/2.8-5.6MHzの
DSD)で録音したものを最終的に
CDの規格まで「落とす」ということが行われています。もうお正月は終わりましたが(それは「
おとそ」)。
CDが誕生した頃にはその音質が絶賛されたものですが、今となってはかつてのアナログ録音には到底及ばない音であることは常識となっています。そこで、
CDに代わる、耳の肥えたオーディオ・ファンにも満足のいくようなもっと良い音のメディアとして
2000年ごろに登場したのが「
DVDオーディオ」と「
SACD」です。
実は、映像メディアの場合、その音声部分ではかなり早い時期から高解像度のスペックが採用されていました。ですから、
DVDで音声だけをメインとして、
CD以上の音質を追求することは、ごく自然の成り行きだったのでしょう。さらに、それとは全く別の発想で、
PCMとは異なる理論によるデジタル録音の方式、
DSDを採用した
SACDも実用化されたのです。
その後の成り行きは、ご存じのとおりです。
DVDオーディオにしても
SACDにしても、殆ど世の中に広がることはなく、この世から消え失せてしまいます。事実、現在では
DVDオーディオを再生できるプレーヤーはほとんどありません。しかし、一度見捨てられたかに見えた
SACDはしぶとく生き残り、今まで主流だった、
CDとの互換性もある「ハイブリッド」タイプではなく、あくまで
SACDに特化してさらなる高音質を追求した「シングル・レイヤー」タイプが出現するに至って、オーディオ・ファンを中心に圧倒的な支持を受けるようになっています。
これで、「ポスト
CD」は
SACDで決まりかと思われた頃、突然「
BD(ブルーレイ・ディスク)オーディオ」なるものが登場しました。いや、日本国内で初めての商品が出たのは昨年の
12月ですが、外国のメーカーの輸入盤ではそれ以前からこのメディアは流通していました。このページでも、今までに
2L、
NAXOS、
SONO LUMINUS、さらに別格の
DECCAの
BDオーディオ(メーカーにより、名称は微妙に異なりますが、中身は同じもので)をご紹介してきています。
これらがアピールしているのは、
SACDのように専用のプレーヤーがなくても、今ではかなり一般家庭に普及している
BD再生機器があれば、それをそのまま使えるという点です。なにはともあれ、「日本で最初」にリリースされた3つのアイテムの中から、オリジナルは
1975年のアナログ録音だったこのタイトルを聴いてみましょうか。比較のために、同じものの
CDも購入します。
この
BDでは、すべての曲が
24/96と、
24/192の2種類の解像度で収録されていますから、同じ
PCMでもスペックの違いによる音の違いを聴き比べることが出来ます。確かに、その違いははっきり聴き分けることが出来ました。
16/44.1(
CD)→
24/96→
24/192となるに従って、そうですね、木像にたとえれば、大雑把な外観しか掘られていなかったものが、次第に顔の表情の細かいところまでくっきりと出来上がっていく、といったような感じでしょうか。ただ、
192になってしまうと、あまりに細かいところにこだわってしまったために、全体像がちょっと歪んでしまったような印象も受けてしまいますね。この3つの中で、最も元のアナログ録音に近いのではないか、と感じられたのは、意外と
24/96でしたし、杉本さんのマスタリングによる
CDも、なかなか健闘していたように思えました。
操作性は、かなり問題があります。操作用のディスプレイが、演奏が始まると消えてしまうのですね。輸入盤ではそんなことはありません。
2通りの音源が入っていても、ディスクには
4.4GB程度のデータしか入っていませんでした。これだったら、
DVDでも楽々収録できます。このメディアが、完全にぽしゃってしまった
DVDオーディオの二の舞にならなければいいのですが。
BD Artwork © Camerata Tokyo Inc.