おやぢの部屋2
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Romantische Arien
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Christian Gerhaher(Bar)
Daniel Harding/
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
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なんと言っても今年はヴェルディとワーグナーが揃って200歳になるというのですから、盛り上がることでしょう。彼らが生まれる128年前には、バッハとヘンデルという2大巨匠がやはり同じ年に生まれるという奇跡があったばかり、歴史には時々こんなすごいことが起こります。それにしても、ともにイタリアとドイツのオペラ業界では最高位にランクされている作曲家同士が同じ年に生まれたというのですから、すごすぎます。
つまり、世の中には彼らを頂点とする「イタリアオペラ」と「ドイツオペラ」という2つのジャンルが存在することになります。ただ、さっきの、ドイツ人であるヘンデルが作ったのは「イタリアオペラ」、もちろん歌詞はイタリア語ですし、モーツァルトが作ったオペラの大多数は「イタリアオペラ」なのですよ。そもそも、その時代に「オペラ」と言えば、これは間違いなく「イタリアオペラ」のことを指し示していたのですからね。
例えば、モーツァルトには、「オペラ」以外にも、何曲かドイツ語で歌われた劇音楽があります。しかし、それらは「オペラ」と呼ばれることはなく、「ジンクシュピール(歌芝居)」という別の名前が与えられています。確かに、それはセリフと歌が交互に現れるという、「オペラ」とは似て非なるものでした。
ロマン派の時代になっても、そのジンクシュピールの様式にのっとったドイツ独自の「オペラもどき」は作られます。しかし、名実ともに「イタリアオペラ」と肩を並べることのできる「ドイツオペラ」が完成するには、ワーグナーの登場を待たなければなりませんでした。そして、彼は「オペラ」すらも超えるものを作り上げます。最初のうちこそしおらしく自作を「ロマンティック・オペラ」と呼んでいたものの、最終的には「舞台祝祭劇」、さらには「舞台神聖祝典劇」などというとんでもないタイトルをでっち上げるのですからね。
そんな、ロマン派のドイツオペラからのアリアを集めたのが、このアルバムです。しかし、曲目を見てみるとそのあまりの地味さにたじろがずにはいられません。一応ワーグナーからは、「オペラ」時代のアリアが2曲入ってはいますが、その他がシューベルトやシューマンですよ。いや、彼らは確かに「大作曲家」ではありますが、こと「オペラ」に関しては「そんなのあったの?」というのが大方の印象ではないでしょうか。シューベルトの「アルフォンソとエストレッラ」なんて、まるでコーヒー店みたいですね(それは「サイフォンとエスプレッソ」)。シューマンは、このアルバムの「ゲノフェーファ」1曲しか作っていませんが、これは序曲だけはたまに耳にすることがあるものの、オペラ本体としては完璧に人跡未踏の秘境です。
しかし、この「Ja, wart' du bis zum jüngsten Tag(まあ、最後の審判の日まで)」という、第3幕に歌われる「アリア」を聴いてみると、とてもユニークなものを感じないわけにはいきません。そもそもこれはイタリアオペラの「アリア」のような、いったん物語の進行を停止して心の丈を歌い上げるといったような非現実的なものではなく、ワーグナーにも通じるような一つの「ストーリー」としての音楽になっています。それも、最初は傷が癒えて故郷で待つ妻の元に帰れる喜びを歌っていたものが、そこにその妻の不義を知らせる偽の手紙を持った家臣が登場、それを見て家臣に妻を殺せと命じる、といったような複雑な情感をこの短い時間の間に表現しているのですからね。このオペラ、捨てたものではありません。ゲルハーエルも、まさに等身大のリアリティをもって、そのあたりをきっちりと表現しています。
このアルバム中唯一の有名曲、「タンホイザー」の「夕星の歌」も、リリカルの極みで心に染みます。ただ、なぜかこの曲だけ、オーケストラのテンションが低すぎ、木管はボロボロだし、チェロの後奏は悲惨です。

CD Artwork © Sony Music Entertainment
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by jurassic_oyaji | 2013-01-18 22:18 | オペラ | Comments(0)