XIAN/The Yellow River Piano Concerto, CHEN, HE/The Butterfly Lovers Piano Concerto
Chen Jie(Pf)
Carolyn Kuan/
New Zealand Symphony Orchestra
NAXOS/8.570607
洗星海のカンタータをもとに、殷承宗などが「集団編曲」したとされるピアノ協奏曲「黄河」の新録音が出たので、さっそく聴いてみようと思って
CDに針を下ろしたら(あくまで比喩ですからね)、冒頭から素敵なフルート・ソロが聴こえてきました。え~っ、「黄河」の頭って、こんなんだったの、と思ってしまいましたよ。確か、第1楽章の始まりは荒々しいイントロのあと「レ・ミ・レミ・シ」と一本指でも弾けそうな舟歌のテーマが出てくるはず、こんなかわいらしい始まり方ではありませんからね。でも、ジャケットを見ると、確かにトラック1からトラック4が「黄河」、トラック5が「バタフライ・ラバーズ」と書いてあります。もしかしたら、別の
CDが入っていたのでしょうか。たまにそんなことがありますからね。
あわてて次のトラックに飛ばします。すると、そこからはちゃんと「黄河」の第1楽章が聴こえてきました。ということは、これは改訂版?そういえば、第3楽章は竹笛のソロで始まったはずですから、それをフルートで吹いて、順序を変えたのでしょうか。でも、もう少し飛ばして先のトラックの頭を聴いてみると、そのソロはトラック4で、竹笛ではなくピッコロによって演奏されていました。さっきのフルート・ソロとは全然別の音楽です。念のため、最後のトラック5に飛ばすと、そこからは、「黄河」4楽章のあのノーテンキなテーマが聴こえてきましたよ。ということは・・・
なんのことはない、この「黄河」は別に改訂版でもなんでもなく、単にトラックがカップリングの「バタフライ・ラバーズ」と入れ替わっていただけなのですよ。つまり、
- ジャケット表示/I-IV:Yellow River
V:Butterfly Lovers
- CDのトラック/I:Butterfly Lovers
II-V:Yellow River
ということです。
もちろん、レーベル面にもジャケットと同じトラックが印刷されていますし、日本の代理店が付けた「帯」にも、この件に関しては一切触れられていません。でも、もしこの
CDを聴いていれば当然発売前に回収していたでしょうから、そもそも現物を聴いていなかったのでしょうね。いや、聴いても気がつかなかったとか。情けないですね。そんな人が解説の中で、「豊かな文化に支えられた中国、どのような状況に於いても、美しいものを愛する心は不変であることを願うばかりです」などと、偉そうに最近の日中関係にまで言及しているのには、大爆笑です。これでは小学生の作文以下、帯解説をなんだと思っているのでしょう。
今まで、男性ばかりによる勇壮な「黄河」しか聴いていませんでしたから、今回の指揮者もピアニストも女性という演奏はなにか新鮮なものがありました。何しろ、いきなりさっきの「舟歌」のテーマで、2回目の「レ」にしゃれたトリルがかかるのですからね。この曲から、なにかソフトな情緒を味わうのも悪くはありません。
1958年に陳剛と何占豪によって作られた「バタフライ・ラバーズ」は、中国に古くから伝わる梁山伯と祝英台との悲恋の物語(死後、二人は蝶になるのだそうです)を描いた単一楽章のヴァイオリン協奏曲でした。それを
1985年に陳剛がピアノ協奏曲に作り直したものが、ここでは演奏されています。そう言えば、さっき聴こえたフルート・ソロは、まるで軽やかに飛び回る蝶のように聴こえなくもありません。迂闊でした。今まで一度も聴いたことはありませんでしたが、ヴァイオリン版はこのレーベルや系列の
MARCO POLOレーベルには、
CEO夫人西崎崇子のソロで何度も何度も録音されています。その最新のものは
2003年録音の
NAXOS盤ですが、その時のプロデューサー、バックのオーケストラ、さらには録音会場まで全く今回と同じ、つまり、このアルバムは西崎盤の流れを汲むものだったんですね。それでこんなミスを犯すなんて、
CEOの顔に泥を塗るようなものではないでしょうか。関係者には、女子は
バタフライ・ショーツ一枚になって踊り、男子は
バタフライで
100mを泳ぐという過酷な罰ゲームが待っています。
CD Artwork © Naxos Rights International Ltd.