おやぢの部屋2
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MARTIN/Intégrale des oeuvres pour flûte
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Emmanuel Pahud(Fl)
Francesco Piemontesi(Pf)
Tobias Berndt(Org)
Thierry Fischer/
Orchestre de la Suisse Romande
MUSIQUES SUISSES/MGB CD 6275




1970年にジュネーヴで生まれた生粋のスイス人であるエマニュエル・パユは、デビュー・アルバムをスイスのレーベルからリリースしていました。1993年、弱冠23歳の若者がレコーディングしたものは、エマニュエル・バッハからブライアン・ファーニホーまでという、とてつもなくヴァラエティに富んだアルバムでした(MGB CD 6107)。驚くべきことに、この20年前の商品はいまだに現役盤として流通しています。
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その後パユはEMIとアーティスト契約を結びますが、昨年、久しぶりに古巣のレーベルに録音を行いました。スイスを代表する作曲家、フランク・マルタンの「フルート作品全集」という2枚組のCDです。全部で7つの作品が収録されていますが、マルタンが最初からフルートのために作ったものは1曲しかありません。
その唯一のオリジナル曲である「フルートとピアノのためのバラード」は、1939年にジュネーヴ国際音楽コンクールの課題曲として作られました。その時にこれを演奏して優勝したのがアンドレ・ジョネだったんじゃね。さらに、1948年にも、オーレル・ニコレが同じ曲を演奏してやはり優勝しており、現在では、フルーティストにとっては欠かせないレパートリーになっています。
1939年9月のコンクールでの「初演」を聴いた指揮者のエルネスト・アンセルメは、すっかりこの作品のファンになってしまい、自分でオーケストラとフルートのための編曲を行い、同じ年の11月には今回のアルバムでも演奏している彼のオーケストラ、スイス・ロマンド管弦楽団と、当時の首席奏者アンドレ・ペパンのソロによって「アンセルメ版」の初演を行いました。しかし、マルタン自身はこの編曲はあまり気に入らなかったようで、1941年に自ら弦楽器とピアノのための編曲を行っています。ところが、1944年にUNIVERSALから出版されたピアノ版の楽譜には、先にオーケストラ版があったようなタイトルの表記になっています。これはいったい何なのでしょう。
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そんな、いわく付きの3つのバージョンが、このアルバムでは一度に並べて聴くことが出来ます。確かに、アンセルメの編曲はあまりに色彩的過ぎて、ちょっと引いてしまいますね。たしか、ペパン自身の録音(Cascavelle/VEL 2001)もマルタン版のようですから(未確認)、これは貴重です。
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もっと貴重なのは、ごく最近になってやっとその存在が明らかになったという「バラード第2番」です。マルタンはいろいろな楽器のソロによる「バラード」というシリーズをたくさん作っていますが、1938年に最初に作られた「アルト・サックス、弦楽オーケストラ、ピアノ、ティンパニ、打楽器のためのバラード」を、1940年頃にフルートのためにソロの音域を縮めて編曲したものです。ただ、その自筆稿は2008年にマルタンの未亡人マリア・マルタン(この方はフルーティストだそうです)によってやっと発見されました。世界初演は2009年に行われ、楽譜もUNIVERSALから出版されました。このパユの録音が、恐らく世界初録音でしょう。聴いた感じは「1番」より演奏はやさしそうな気がします。これも、ピアノ・リダクション版が一緒に収録されています。
もう1曲、オリジナルはヴィオラ・ダモーレ(!)とオルガンという「教会ソナタ」も、オルガン版と、デザルツェンスという人が編曲した弦楽オーケストラ版が演奏されています。緩-急-緩-急という4つの楽章で出来ているのが本来のバロック時代の「ソナタ・ダ・キエザ」ですが、ここではゆったりと流れる部分が、軽やかな舞曲を挟むという形になっています。フルート版はマリアさんのバースデイ・プレゼントだったそうですね。
放送局が制作したためでしょうか、何の潤いもない録音は長時間聴き続けるには辛いものがあります。そんな音によって、パユのルーティンな演奏で同じものを2回も3回も聴かされるのは、レアな曲目に対する好奇心がないことにはとても耐えられるものではありません。

CD Artwork ©c Fédération des coopératives Migros
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by jurassic_oyaji | 2013-01-27 00:04 | フルート | Comments(0)