おやぢの部屋2
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BACH/Matthäus-Passion
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Fritz Wunderlich(Ten), Christa Ludwig(Alt)
Wilma Lipp(Sop), Walter Berry(Bas)
Karl Böhm/
Singverein der Gesellschaft der Musikfreunde, Wien
Wiener Sängerknaben, Wiener Symphoniker
ANDROMEDA/ANDRCD 9117




カール・ベームが1962年のイースターにウィーンのムジークフェラインで行った「マタイ」の演奏会のライブ録音です。そもそもベームがバッハを演奏していたことなど全く知りませんでしたが、この音源は以前から出回っていたようで、今回新しくリマスタリングされたものが、こんな聞いたことのないレーベルからリリースされました。
もはやプロの現場ではステレオ録音は一般的になっていた時期ですが、これはモノラル録音、しかも、すぐそばの人の咳払いのようなノイズがたっぷり入っていますから正規の放送音源とも思えません。もちろん、そのあたりの正確なデータなどは全く記載されていません。テープのドロップアウトも激しく、合唱は常に飽和していて、お世辞にも「いい音」とは言えません。いや、それにしても、この大人数の合唱は耐えられないほどのひどさです。
普通に演奏すれば3時間以上、CD3枚は必要な「マタイ」なのにこれは2枚に収まっています。最近ではテンポも速くなっていますし、CDの収録時間も伸びていますから、思い切り早く演奏して全曲2時間40分しかかからないものを2枚のCDに収録するような場合もありますが、このベーム盤はトータル・タイムが2時間27分、いくらなんでも速すぎます。
いや、いくら昔のベームのテンポは速かったからと言って、これは不可能、実はこの演奏には大幅なカットが施されているのですよ。コラールが6曲もカットされているのを筆頭に、アリアも5曲、さらにレシタティーヴォ・セッコも細かいところでカットが入っています。コンサートだから仕方がないと言えばそれまでですが、ほとんどのアリアはレシタティーヴォとワンセットになっているもので、レシタティーヴォが終わったところで肝心のアリアがちょん切られていますから、なんとも残尿感が募ります。
ソリストには、エヴァンゲリストとアリアの両方をこなしているヴンダーリッヒを始めとして、素晴らしい歌手が勢ぞろいです。それぞれに、あくまでもオペラティックな歌い方ではあるものの、バッハらしく節度をわきまえているところが好感をもてます。
この時代の事ですから、まだまだウィーン交響楽団のような普通のオーケストラが「ピリオド・アプローチ」などを手掛けることはあり得ません。今聴くとかなりヘンなところもありますが、それは我慢するしかありません。しかし、例えば39番のアルトのアリアに付けられたとても美しいヴァイオリンのオブリガートのソルフェージュが、今の演奏からはとても考えられないようないい加減なところは、かなり気になってしまいます。逆に、このようなだらしない譜割りで弾かれることによって、はからずもバッハのリズムの重要性に気づかされるのでしょうね。ただ、これはコーラス1のコンマスですが、コーラス2のコンマスがソロを弾いている42番のオブリガートはとてもきっちりしていて素敵でした。
もう1か所、60番の合唱が入るアルトのアリアでは、オーボエ・ダ・カッチャ(もちろん、コール・アングレで演奏してるんだっちゃ)2本のオブリガートが付きますが、その2人の奏者が掛け合いで同じフレーズを吹くときに、トリルを入れるタイミングが全然違うんですね。これも、当時はバロックの演奏法がオーケストラ奏者のレベルまでは浸透していなかった名残なのでしょう。49番のフルート・ソロは、完全に開き直って華麗そのもののテイスト、これはこれで許せます。
なんと言っても、このCDはヴンダーリッヒを聴くためのものなのではないでしょうか。高音でも決して抜かず、フルヴォイスで歌いきっている彼のレシタティーヴォ・セッコを聴いていると、それだけでモーツァルトのアリアを聴いているような気がしてくるから不思議です。なんたって、ジャケットがヴンダーリッヒですからね。


CD Artwork © Archipel Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2013-01-28 20:14 | 合唱 | Comments(0)