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XENAKIS/La légende d'Eer





Gerard Pape(Remix)
MODE/MODE 148



クセナキスが1978年にパリのポンピドゥー・センターのオープニングのために作ったテープ作品、「エールの伝説」が、新しいリミックスで登場しました。以前にもこの作品はCDで出ていたそうなのですが、あいにく私は聴いたことがありません。ですから、これが初めての「エール体験」となるので、以前のミックスと比較は出来ませんが、各チャンネルの分離が明確で、ヒスノイズのないクリアな音は、かなり高いクオリティのものであることはよく分かります。ただ、この作品のオリジナルは7チャンネルのテープを11個のスピーカーで再生するもの、しかも、演奏の際は作曲家自身がコンソールを操作したのでしょうから、それを他の人が2チャンネルにトラックダウンした時には、自ずと別のものが生まれることになります。機会があれば、別ミックスのCDも聴いてみたいものです。
建築家(ル・コルビュジュの弟子)でもあったクセナキスは、「建築と音楽のコラボレーション」という、とてつもないコンセプトを打ち立て、1958年のブリュッセル万博での「フィリップス館」で、それを実現させました。パヴィリオンの設計はもちろんクセナキス自身が行い、その中では光とシンクロさせたテープ音楽「コンクレPH」が演奏されます。そして、その音楽の中には、建築設計の時の数学的なデータが変換されて入っているという、ちょっと人間の知覚の限界を超えるような「仕掛け」が施されているのです。これが後に「ポリトープ」と呼ばれるようになり、1967年のモントリオール万博のフランス館では、テープではなく4つのオーケストラの生音が、パヴィリオンの中に響き渡ったのでした。
このポンピドゥー・センターで行われたものも、その「ポリトープ」の系譜に属するものですが、ここでは「ディアトープ」と、ビールを飲ませるフーゾク(それは「ビアソープ」)みたいに呼ばれています。連続する、全部で6つの部分から成る50分弱のテープ音楽、その中には、もちろん数学的な意味を持つ電子音も含まれていますが、多くは実際の楽器や「モノ」から出る音をサンプリングして、それに様々な加工を施すという、いわゆる「ミュージック・コンクレート」の手法が使われています。
最初の「第1部」では、およそクセナキスらしからぬ静謐な世界が広がっているのに、まず驚かされます。ここでは、虫の音のような非常に高い周波数の音が、微細音程で重なり合って、まるで脳の中枢に直接働きかけられるような、ちょっとアブない体験を味わえるかもしれません。「宇宙の始まり」といった趣でしょうか。それに続く部分は、徐々に音のスペクトルが低周波へシフト、水の音や石を擦り合わせる音といった「具体音」のクラスターが所狭しとスピーカーの間を踊り廻る生命力あふれるパートとなります。「第4部」あたりは、まるでディストーションのかかったギターのような暴力的な電子音が登場、殆どヘビメタの領域に入っていく感じすら。そして「第5部」は、かなりソフィストケートされた、まるでスティーヴ・ライヒのようなテイストに支配されます。最後の「第6部」は、「第1部」の再現、鳥のさえずりのようなリズムの単音が果てしなく繰り返され、全ては闇の中へと収束していきます。
本来は、もちろんおびただしい数のレーザー光やフラッシュライトが醸し出すイメージの中で聴かれる音楽、しかし、それはデータが残っていないために永遠に再現不能なものですから、逆に想像を働かせて音の海に身を任せるのも、ちょっと素敵な体験かもしれません。
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by jurassic_oyaji | 2005-06-01 19:52 | 現代音楽 | Comments(0)