おやぢの部屋2
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3月11日
 いつものように事務室で仕事をしていると、どこか遠くから梵鐘の音が聴こえてきました。時計を見ると3時少し前、そうだったんだな、と思って一人で黙祷をしてみます。低い周波数がはるか遠くまで伝わって聴こえるのが、日本の梵鐘の特徴です。風景の中を這うように伝わってきた音が、「音」ではなく「気配」として感じられる時、まるで静寂の中に身を置いているような不思議な錯覚にとらわれます。たぶん、こんな静寂の中だからこそ、私の思いも遠くまで伝わるのではないか、と、勝手に想像してみたりします。
 2年前のこの日も、やはり同じこの部屋にいました。いつまで経っても激しい揺れが一向に収まらないのに、言いようのない不安感が募ったことは鮮明に憶えています。ひとしきりの揺れが収まって外に出てみたら、鐘楼の屋根が完全に崩れ落ちていました。いまだに、復旧工事は始っていませんが、たぶん今年中には再建出来ることでしょう。来年のこの日には、今度はこちらから静かな低周波を送れたらいいな、と思っています。
 この日に合わせて、世の中では様々な行事が目白押しです。合唱仲間が参加して、モーツァルトの「レクイエム」を演奏するコンサートなども催されているそうです。たぶん、フォーレやデュリュフレなどの作品だったら、心から犠牲者を悼む気持ちにはなれるのでしょう。ただ、激しい曲調の「セクエンツィア」のテキストが含まれるモーツァルトはまた別の機会に聴いてみたいような気がします。同じように、ヴェルディの作品なども、当日からは少し離れた時期に聴きたいですね。いや、出来れば実際に歌ってみたいですね。
 実は、私はデュリュフレ、フォーレ、モーツァルトの作品は実際に歌ったことがあります。モーツァルトはほんの1年前にやったばかりですが、他の2曲ははるか昔、学生時代のことでした。もちろん、混声の曲ですから、歌ったのは所属していた大学の男声合唱団ではなく、エキストラで参加してそのまま居ついてしまった市民合唱団です。デュリュフレなどは仙台初演、その合唱団の指揮者の魅力にも惹かれて、とても素晴らしいレクイエム体験だったような気がします。フォーレも同じ合唱団で歌いました。
 最近は、一度再開した合唱もちょっと行き詰って来たので、しばらく休もうと思っていたところに、その指揮者(まだご存命です)がオーケストラと一緒にヴェルディの「レクイエム」を演奏するというニュースが、どこからともなく伝わってきました。ただ、どんな団体が歌うのかはいまいちよくわかりません。それが、この間の三善のワンナイト・スタンドの時に会った仲間からかなり詳しいことを教えてもらえました。そして、これだったらこの前の某○リーン合唱団のように、賛助出演枠で、ちゃんとした手続きを踏んで参加したのに、心ない一団員から「団員の社交辞令を真に受けてのさばり始めている。迷惑な話だ。」と罵られて辞めざるを得なくなるようなことはないだろうと、即刻ネットで参加を申し込みました。そう、この団体は、そういうことにもかなり熱心な事務局が仕切っているのでした。申し込んだ時点でメルマガにも登録され、翌日には連絡事項が届いていましたからね。
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 初めて行ったのがこの間の土曜日、行ったことのない場所だったので入口が分からずに、それらしいところから入ったら、目の前にこちらを向いて団員が座っていました。知っている顔がたくさんいて、口々に「なんで今頃来たの」とか、「もうそろそろ来る頃だと思ってたよ」とか、微妙な挨拶を寄こしてくれます。どうやら、これで私のヴェルディを歌いたいという願いはかなえられそうです。
 出席をチェックしようと思って受付に行ったら、すでに私の名前も印刷されていました。さすがです。
by jurassic_oyaji | 2013-03-11 21:50 | 禁断 | Comments(0)