おやぢの部屋2
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C.P.E.BACH/Matthäus-Passion



Karl-Friedrich Beringer/
Windsbach Knabenchor
Deutsche Kammer-Virtuosen Berlin
RONDEAU/ROP2027







Joshard Daus/
Zelter-Ensemble der Sing-Akademie zu Berlin
CAPRICCIO/60 113



大バッハの次男、カール・フィリップ・エマニュエル・バッハの「マタイ受難曲」です。1767年に、彼の「ゴッドファーザー」であったゲオルク・フィリップ・テレマン(「フィリップ」をもらったのですね)の後継者として、ハンブルクの5つの大きな教会のカントールとなったバッハ(あ、もちろん「エマニュエル」ですが)は、1769年から1789年まで毎年、新約聖書の4つの福音書に基づく受難曲を作ったということですから、全部で21曲の「○○受難曲」が残されていることになります。彼は1788年には亡くなっているので、きちんと次の年の分まで作っていたということになりますね。その中に「マタイ」は6曲ありますが、そのうちの1781年と1785年のものが、このたび「世界初録音」ということで華々しく登場しました。
作られてから200年以上も経ったものが、今頃「初録音」というのはちょっと奇異な感じがしますが、それには訳があります。これらの楽譜はハンブルクを離れて、例のメンデルスゾーンによる「マタイ」(これは大バッハ)の蘇演で有名な、ベルリンの「ジンクアカデミー」のコレクションとなっていたのですが、第二次世界大戦の末期に、ソ連軍の手によって全て持ち去られていたのです。それがやっと、2001年になって晴れてベルリンに返還され、校訂の手が施されてこのように初演以来初めて「音」として聴くことが出来たというわけなのです。
大バッハの「マタイ」は、演奏に3時間以上もかかるという膨大なものなのですが、それから60年近くの時を経て、場所もライプチヒからハンブルクへ変わると、この曲を演奏する環境が大きく変わることになります。何しろ、そこでは5つの教会(場合によってはさらに他の教会で演奏されることもありました)で同じものを演奏しなければなりませんし、他の礼拝と一緒にされてしまうということもあって、せいぜい1時間程度の長さしか与えられないようになるのです。今回のCDも、もちろんどちらも1枚だけで全曲が収まってしまうという、コンパクトなものになっています。
少年合唱の初々しさが心地よい1781年ものを演奏しているベリンガー盤、そして、いかにも「大人」の演奏を聴かせてくれる1785年もののダウス盤、いずれの曲も、ちょっと聴いてみるだけですぐ分かるのですが、大バッハ版「マタイ」からの引用が数多く見られます。殆どのコラールは聴いたことがあるものですし、劇的な場面で使われる合唱も、あの印象的なフーガがそのまま使われているのですから。そして、どちらの曲でも、最後はあの印象的な受難コラール「O Haupt voll Blut und Wunden」で締めくくられるというもの。まさに大バッハ版のダイジェストといった趣です。思い切り痩せたと(それは「ダイエット」)。ベリンガー盤のライナーにはきちんと注釈があるのですが、その間の合唱やアリアなども、実は殆どエマニュエルのオリジナルではなく、別の作曲家の引用であることが分かります。しかし、ここぞというところに、紛れもなくエマニュエルの個性がしっかり表れたアリアなどが挿入されているのは、嬉しいものです。
想像するに、この頃の受難曲では、大昔に作られた大バッハのものが「型」として延々受け継がれていたのではないでしょうか。誰でもそれを聴けば安心できるという、ある種「懐メロ」、その中に、様式的にはまさにモーツァルトと同時代の音楽が潜んでいても、誰も目くじらを立てたりはしなかったのでしょうね。
いずれ全貌が明らかになるであろう、エマニュエルの受難曲の世界、楽しみです。
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by jurassic_oyaji | 2005-06-04 19:39 | 合唱 | Comments(0)