おやぢの部屋2
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曲目解説
 この間からの懸案だった定期演奏会のための仕事が、やっと終わりました。それは、プログラムに載せる曲目解説の原稿書きです。シューマンの「ゲノフェーファ」序曲を、例によって他に書く人がいないと泣きつかれ、引き受けたものです。出来上がったのはこんな感じ。
 
 今年はヴェルディとワーグナーという「イタリアオペラ」と「ドイツオペラ」を代表する作曲家が揃って200歳を迎えることでオペラ界は盛り上がっています。彼らが生まれるほんの128年前には、バロックの2大巨星バッハとヘンデルがやはり同じ年に誕生する奇跡があったばかり、人類の歴史では時々こんなすごいことが起こります。
 しかし、ドイツ人であるヘンデルが作ったのが紛れもない「イタリアオペラ」だったように、かつては「オペラ」と言えば「イタリアオペラ」のことでした。名実ともに「イタリアオペラ」と肩を並べることのできる「ドイツオペラ」が完成するには、ウェーバーを経てワーグナーの登場を待たなければならなかったのです。
 確かに、ワーグナー以前のドイツ・ロマン派の巨匠、シューベルトもメンデルスゾーンも、そしてシューマンもオペラは作っていました。しかし、今日では彼らの作品はほとんど顧みられることはありません。シューマンが1849年に完成させた彼の唯一のオペラ「ゲノフェーファ」も、本日の指揮者山下一史氏によって日本初演が行われてはいますが、到底オペラハウスのレパートリーに入るようなものではありません。ただ、十字軍に出征したブラバントの領主が、彼の留守中に新妻が不義をはたらいたことに激怒して刺客を送るも、後に誤解に気づかされ、許しを乞うて幸せに暮らす、といういかにもロマンティックなシナリオを見事に音楽的に表現した序曲だけは、折に触れて演奏されることがあります。
 ソナタ形式によるこの序曲、非常にゆったりとした序奏の冒頭は、いかにも不安定な情緒をかきたてる「ソ・シ・レ・ファ・ラ♭」という「フラット・ナインス」の和音です。序奏の最後に現れる、「ラメント」と呼ばれる悲しげな下降音型の断片は、アップテンポに変わる主部では、提示部の第1主題となって切ないストーリーを語ります。そこに第2主題として聴こえてくるのが、ホルンによる勇壮なファンファーレ。これは、領主ジークフリートのモティーフでしょうか。その後には常に新妻ゲノフェーファの貞淑さを思わせるような優雅なモティーフが続きます。このセットは全部で4回登場しますが、2回目の展開部ではこの二つのモティーフの間を邪魔者が引き裂きます。それが、再現部とコーダではまた仲良く寄り添っているのですから、思わず「ゲノフェーファ、よかったね」とつぶやかずにはいられません。
 シューマンの隠れた逸品を、ぜひご堪能ください。

 頼まれたのは600字ですが、軽く1000字を超えてしまいました。それで、最初の2つの段落をカットした「ショートバージョン」も用意してあります。どちらが使われることでしょう。送ってしまってから、1ヶ所訂正したくなりました。赤字の部分がそうです。
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by jurassic_oyaji | 2013-03-19 23:23 | 禁断 | Comments(2)
Commented by ま~さん at 2013-03-20 09:34 x
非常に読みやすく、内容的にも過不足の無いもので、大変結構だと思います。
Commented by jurassic_oyaji at 2013-03-20 13:13
ありがとうございます。