おやぢの部屋2
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BACH/Matthäus-Passion
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Ernst Haefliger(Ev)
Heinz Rehfuss(Jes)
Eduard van Beinum/
Het Toonkunstkoor Amsterdam
Het Concertgebouworkest
AUDIOPHILE/APL-101.302




今年のイースターは3月31日なのだそうです。復活祭ともいわれるこのキリスト教の年中行事は、結婚相手を探すために景気を付けるお祭り(それは「婚活祭」)ではなく、イエス・キリストが磔刑の後お墓の中から甦ったという「故事」を記念するもので、この日にはよく受難曲が演奏されます。今から55年前、1958年のイースターは4月6日でしたが、オランダのアムステルダムにあるコンセルトヘボウでは、その1週間前の3月30日にバッハの「マタイ受難曲」が演奏されました。その模様は、午後0時から4時15分までの間に、ラジオで生放送されています。
その時の録音が、なぜか今頃になってCDとして発売されました。演奏はそのホールのオーケストラ、コンセルトヘボウ管弦楽団、指揮者はこのオーケストラの3代目の首席指揮者、エドゥアルト・ファン・ベイヌムです。このオーケストラの演奏する「マタイ」といえば、ベイヌムの前任者、メンゲルベルクの指揮によって1939年の4月2日、やはりイースターの1週間前に演奏されたものの録音が非常に有名ですね。
メンゲルベルクの録音から20年近く経っているというのに、この初出音源の音ときたら、信じられないほどのひどいものでした。ダイナミック・レンジなどは、メンゲルベルク時代とほとんど変わらないのでは、と思えるほどですし、ノイズも盛大に乗っています。最後の大合唱などは、マイクのそばで何かがぶつかるような音がかなり長い間連続して聴こえるので、邪魔でしょうがありません。もちろん、録音はモノラルです。これが、当時のオランダの放送局の技術水準だったのでしょうか。
1958年といえば、すでに世の中ではステレオ録音が始まっており、もう少しすると、ミュンヘンでやはり「マタイ」の全曲ステレオ録音が、ドイツ・グラモフォンによって敢行されることになります。この、カール・リヒターによる最初の録音と比べてみると、オランダの放送録音はとても同じ年に作られたものとは思えないほどの貧しい音です。
余談ですが、このリヒター盤のCDでも、さすがに今聴くと音が濁っているところが見られます。それを改善すると称して、2012年にPROFILからリマスター盤が出ましたが(PH12008)、これは「改善」どころか、もっとひどい音になっています。おそらく、すでにマスターテープが劣化してしまっているのでしょう。
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メンゲルベルクの「マタイ」は、どっぷり「ロマンティック」の世界を引きずっているものでしたが、ベイヌムの演奏は全く別物、それこそリヒターのような当時としては「新しい」様式をしっかり持ったものです。冒頭の合唱などはリヒターより速め、現代のバッハ・シーンでも十分に通用するほどのサクサクとしたものになっていますからね。ただ、このあたりはなぜか合唱がかなりドライな歌い方に徹しているような気がします。もしかしたら、ベイヌムは意識してあまり感情を込めない歌い方を要求していたのかもしれませんね。というのも、ここで歌っているトーンキュンスト合唱団は、メンゲルベルクその人が1898年から指揮者を務めていて、毎年の「マタイ」コンサートでもすっかり彼の音楽が染み付いてしまっているところですから、そんな「癖」、言ってみればメンゲルベルクの「呪縛」を解くには、そのぐらいの荒療治が必要だったのでしょう。もちろん、オーケストラも「まっさら」の状態から仕込みなおしたのでしょうね。
そんなベイヌムの努力は、見事に報われているようでした。素っ気なかった合唱も、終わりごろにはしっかりと豊かな感情、もちろんそれはメンゲルベルク流のゆがんだものではない、時代を超えて納得のできる自然な表情が出せるようになっていましたからね。
エヴァンゲリストが、リヒター盤と同じヘフリガーだったことも重要なファクターです。イエス役のレーフスともども、素晴らしいレシタティーヴォが展開されています。これで音さえもっとよければ、余裕でリヒター盤と肩を並べることもできたのに。

CD Artwork © IMC Music Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2013-03-24 20:53 | 合唱 | Comments(0)