おやぢの部屋2
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BACH/John Passion
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Joanne Lunn(Sop), Clare Wilkinson(Alt)
Nicholas Mulroy(Ten), Matthew Brook(Bas)
John Butt/
Dunedin Consort
University of Glasgow Chapel Choir(by J. Grossmith)
LINN/CKD 419(hybrid SACD)




一筋縄ではいかない版を取り上げるのが好きなジョン・バット率いるダンディン・コンソート(正確には「ダニーデン・コンソート」と表記されるようだに)が、バッハの「ヨハネ」を演奏すると、こんなことになりました。ご存知のように、この曲はバッハが教会で典礼の「一部」として作ったものですから、現在のように「受難曲」だけを単独で演奏することはあり得ませんでした。そこで、その典礼のすべてを聴いてもらおうとこんな録音を作ってしまったのですね。
まず、教会に集まった人たちは、オープニングにオルガンでコラール・プレリュードが演奏されるのを聴きます。そのあとは、席から立ち上がって、今演奏されたオルガン曲で使われたコラールを、全員で歌います。さらにもう1曲オルガンの演奏があって、やおら「ヨハネ」の第1部が始まるのです(この部分はかなりショッキング)。
それが終わったところで、「お説教」です。ただし、この部分はSACDには入ってません。聴きたい人は、無料でダウンロードしてくれ、ということですね。たしかに、これは妥当な措置でしょう。長~いお説教が終わって、やっと「第2部」が始まります。
もちろん、「ヨハネ」が終わってもそのまま帰るわけにはいかず、さらにひとくさりオルガン演奏やらコラールの斉唱があって、やっとこの典礼が終了するのですね。なかなか大変です。ここでは、教会にいる会衆が全員でコラールを歌う様子を再現するために、ダンディン・コンソート以外にもう一つの聖歌隊と、さらに、50人ほどのアマチュアの合唱団員を集めて、「全員合唱」を聴かせてくれます。
そんな、バッハの時代にタイムスリップして典礼を体験してみましょう、みたいな企画には、バットならではの明確なタイム・ポイントがありました。それは、「1739年の聖金曜日」です。実はこの年、バッハは彼にとっては4度目となる「ヨハネ」の上演に向けて、楽譜の改訂に余念がありませんでした。ところが、新しい五線紙を前に、今まで演奏してきたこの曲の細かいところを直す作業に励んでいるところに、ライプツィヒ市当局から「上演を中止せよ」というお達しがあったため、10番のレシタティーヴォまで清書した時点で、スコア作りの作業をやめてしまうのです。もちろん、この年に「ヨハネ」は演奏されてはいません。もしかしたらバットは、バッハに成り代わって「もし、実際に上演されていたら、その典礼はこんな風になったであろう」という観点で、この復元作業を行ったのかもしれませんね。
ですから、ここでバットは、その未完に終わってしまったスコアを仕上げるという仕事も、バッハから引き継いだことになります。当然、それは現在最もよく用いられている「新バッハ全集」とは、微妙なところで異なったものになっています。具体的には、まず、19番のバスのアリオーソ「Betrachte, meine Seel」と20番のテノールのアリア「Erwäge, wie sein blutgefäbter Rücken」の楽器編成が、第1稿に準拠した新全集で使われていたヴィオラ・ダモーレやリュートではなく、それ以降の演奏で使われた弱音器付きのヴァイオリンとオルガンに変わっています。さらにもう1曲、35番のソプラノのアリア「Zerfließe mein Herze」の9小節目から管楽器に付けられたスタッカートを、旧全集のような2音ずつのスラーに直しています。このスタッカートは、この後1749年に演奏する際にフルートとユニゾンで加えたヴァイオリンのためだ、という主張からです。もちろん、ここではヴァイオリンは加わっていません。
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基本的に、声楽のソリストに各パート一人ずつのリピエーノを加えて合唱の部分を歌うというスタイル、最近よくある形ですが、女声パートに比べて男声のインパクトが強すぎるため、ちょっとこの曲のイメージが変わってしまっているのが気になります。コラールなどは、典礼で歌っているグラスゴーの聖歌隊の方が、気持ち良く聴けます。

SACD Artwork ©c Linn Records
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by jurassic_oyaji | 2013-03-27 00:35 | 合唱 | Comments(0)