おやぢの部屋2
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MOZART/Requiem
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Elin Manahan Thomas(Sop), Christine Rice(MS)
James Gilchrist(Ten), Christopher Purves(Bar)
Stephen Cleobury/
The Choir of King's College, Cambridge
Academiy of Ancient Music
THE CHOIR OF KING'S COLLEGE/KGS0002(hybrid SACD)




合唱団としては、おそらく今までのレコードのリリースでは他を寄せ付けない数を誇っていたであろう「ケンブリッジ・キングズカレッジ合唱団」が、ついにこんな自主レーベルを作ってしまいました。第1弾はキャロル集だったようですが、第2弾としてリリースされたのが、モーツァルトの「レクイエム」だったとは。
この合唱団(聖歌隊)は、1957年に音楽監督に就任したデイヴィッド・ウィルコックス以来、フィリップ・レッジャー、さらに現職のスティーヴン・クロウベリーに至るまで、EMIなどの大きなレーベルに数多くの録音を残してきましたが、なぜかこの曲だけは、公式の録音は見当たりませんでした。そんな、ありそうでなかったものが、ここに初めて登場したことになります。
さすがに、長い間待たせただけあって、これはなかなか思いのこもったアルバムになっていました。まずは、本体のSACDの他にもう1枚、普通のCDが入っていて、そちらにはクリフ・アイゼンという今各方面から注目を集めているモーツァルト学者(キングズ・カレッジの教授)が原稿を書いた1時間ほどの「オーディオ・ドキュメント」が入っています。これを聴けば、この曲に関する最新の情報が得られるという優れものです。もちろん、すべて英語でのナレーションですから、きちんと理解するにはかなりのヒアリング能力が必要とされますが、英検やTOEICを目指している人なら、心配しなくてもええけんね。
その中では、もちろんこの曲の「修復稿」についても詳細に語られるだけではなく、わざわざこのために本体での演奏家によって録音された音源を使って、それぞれの版の違いなども実際に聴くことが出来ます。1996年に作られたというサイモン・アンドリュースによる修復稿の存在というホットな情報も知ることが出来ますよ。それだけではなく、まさに最新、2011年に作られたばかりの、1946年生まれのイギリスの作曲家マイケル・フィニスィーによる「フィニスィー版」に関するコメントまでもが、作曲者自身によって語られているのですからね。なんでも、それは、「もし、モーツァルトが現代に生きていたとしたら作ったであろう音楽」を想定して作られたものなのだとか、これは、それによく似ていても微妙に異なるコンセプト(実際は「モーツァルト時代の作曲家になりきって作った音楽」)による、ダンカン・ドゥルースの仕事よりはるかに「ラジカル」なものなのでしょう。このドキュメントでは、そのドゥルースのコメントも聴かれます。
本体では、最初に「ジュスマイヤー版」によって全曲が演奏された後に、「Lacrimosa」に続いて演奏されるはずの「アーメン・フーガ」をモーンダー版、「Sanctus」の前半をレヴィン版、「Hosanna」以降をバイヤー版、「Benedictus」をドゥルース版、終曲の「Cum sanctus tuis」をレヴィン版で演奏、さらに最後に「Lacrimosa」のフィニスィー版が演奏されています。確かに、フィニスィー版は時代を超えた様式の超ラジカルな仕上がり、これはぜひとも全曲を聴いてみたくなります。
ジュスマイヤー版の演奏も、今までこの演奏者たちに抱いていたイメージを良い意味で裏切るような「ラジカル」なものでした。それはまさに、多くの修復稿が出揃った「現代」ならではのアプローチのように感じられます。
ちょっと気になったのは、オーケストラのメンバーです。この団体にしては異様に大きな編成で、管楽器などは「倍管」になっています。ただ、実際に聴こえてくるものはそんな「ラジカル」なものではなく、ごく普通の編成のようでしたから、おそらくこれは2011年の6月と9月に2度に分けて行われたセッションで、それぞれメンバーが異なっていたということなのでしょう。その9月のセッションでは、サイモン・アンドリュース版が録音されていた、という情報もあります。これも、いずれは聴いてみたいものです。

SACD Artwork © The Choir of King's College
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by jurassic_oyaji | 2013-04-09 23:04 | 合唱 | Comments(0)