おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
BACH/Jonannes-Passion
c0039487_22402950.jpg
Fritz Wunderlich(Ev), Dietrich Fischer-Dieskau(Jes)
Elisabeth Grümmer(Sop), Christa Ludwig(Alt)
Josef Traxel(Ten), Karl Christian Kohn(Bas)
Karl Forster/Berliner Symphoniker
Chor der St. Hedwigs-Kathedrale Berlin
EMI/0 96485 2




またまた「ヨハネ」ですが、なんせヴンダーリッヒがエヴァンゲリストですから押さえないわけにはいきません。この前の「マタイ」のような怪しげな録音ではなく、その1年前、1961年にEMIによってスタジオ(教会)で録音されたステレオ録音です。もちろん、ベームのようなカットは入っていない全曲演奏です。
何しろ、歌手にはヴンダーリッヒを始めとした重量級が揃っています。ここでは彼はアリアは歌わずにエヴァンゲリストに専念、そして、やはりレシタティーヴォでのイエスだけを歌っているのが、フィッシャー・ディースカウですからね。なんと贅沢な。女声もアルトのクリスタ・ルートヴィヒやソプラノのエリザベート・グリュンマーといった大物が参加していますから、さすがEMIです。
ただ、このジャケットを見ると、おなじみのニッパーのマークに「ELECTROLA COLLECTION」などという文字がデザインされています。EMIというのは1931年に、「イギリス・コロムビア」と「イギリス・グラモフォン(商標である"His Master's Voice"から、もっぱら"HMV"と呼ばれます)」という2つの大きなレコード会社が合併してできた会社ですが、「Electrola」というのは、HMVが以前ドイツに持っていた子会社「ドイツ・グラモフォン」がドイツの会社になってしまったために1925年に新たにベルリンに設立した会社です。EMIというのは不思議な会社で、合併した後でもかつてのそれぞれの会社のレーベルを表に出していました。そんな「伝統」が、いまだにこんな形で「ドイツEMI」の中には残っているのですね。これは、実はユニバーサルと「合併」する前にリリースされたもの、今後はこういう形のシリーズを、「親会社」はどのように扱うのか、興味があるところです。
前回のレビューのカラヤンのSACDには「おまけ」として1959年に録音された曲が入っていましたが、これはベルリンで「エレクトローラ」のスタッフによって録音されたもので、録音会場とエンジニアはこの「ヨハネ」と全く同じです。ですから、あの時にSACDで当時のエレクトローラの本来の音を聴いてしまったあとでは、このCDから聴こえてくる1992年のリマスタリングの音は、とてもひどいもののように思えてしまいます。以前は、この異様に高域を強調した音がこのレーベルの音だと思っていたものが、本当はもっとナチュラルで瑞々しいものであることを知ってしまったら、もう元に戻ることは出来ないのですね。困ったものです。
今回の「ヨハネ」の指揮は、カール・フォルスター、ここで歌っている聖ヘドヴィッヒ大聖堂合唱団の指揮者です。指揮棒を腰に差して持ってました(それは「ホルスター」)。オーケストラはベルリン交響楽団ですが、なぜかオーボエに当時はベルリン・フィルの首席奏者だったローター・コッホの名前があります。エキストラで録音に参加していたのでしょうか。ただ、この曲の場合はオーボエ・ソロのオブリガートが華々しく活躍するような場面は殆どありませんから、わざわざ来た意味があまり分かりませんが。それよりも、使っている楽譜は当然旧全集ですから、20番のテノールのアリア「Erwäge, wie sein blutgefäbter Rücken」で使われているヴィオラ・ダモーレの方が興味をそそられます(新全集では、注釈つきで弱音器付きのヴァイオリンになっています)。さらに、レシタティーヴォ・セッコでの低音が、普通はチェンバロが使われているものが、イエスの時だけオルガンが演奏されているのも、なんだか「マタイ」の雰囲気を感じさせて面白い試みです。
ヴンダーリッヒとフィッシャー・ディースカウの、とても人間的なエヴァンゲリストとイエスは、時代を超えて感動を呼ぶものでしょう。ただ、肝心の合唱は、ある特定の時代でのみバッハの受難曲に求められる合唱像として存在しえた、一つのサンプルとしての価値しかありません。

CD Artwork © EMI Music Germany GmbH & Co. KG
[PR]
by jurassic_oyaji | 2013-04-13 22:43 | 合唱 | Comments(0)