おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
CASTELNUOVO-TEDESCO/Naomi and Ruth



Ana Maria Martinez(Sop)
Neville Marriner/
Academy and Chorus of St. Martin-in-the-Fields
NAXOS/8.559404



マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコという、長ったらしいラストネームを持つ作曲家については、ギターとフルートのアンサンブル曲で知っていただけ、ギターの作品がかなり多いこともあって、スペインの人かと本気で思っていたものでした。実はイタリア生まれのユダヤ人、第二次世界大戦中に、迫害を逃れてアメリカへ移住、晩年はハリウッドで映画音楽の仕事にも携わっていたことも、初めて知りました。そんなわけですから、彼にこんな合唱作品があったことなども、このCDでやはり初めて知ったことになります。
もう一つ、初めて知ったのは、このタイトル曲「ナオミとルツ」の「ナオミ」というのは、「直美」や「尚美」とは無関係、旧約聖書の中に登場するキャラクターだったと言うことです。「ナオミ・キャンベル」や「ナオミ・ワッツ」は、だから日本とはなんの関係もないことを今更ながら知ったということで。この曲は、その「ナオミ」と、その息子の嫁である「ルツ」の物語(と言っても、恩返しに機は織りません・・・それは「ツル」)、旧約聖書の「ルツ記」からテキスト(英語)が取られている、ごく短いオラトリオです。ナオミの言葉がソプラノ・ソロによって歌われ、その他の物語が合唱で語られます。しかし、そんな、ある種堅苦しいイメージなど、曲が聞こえてきたらどこかへ吹っ飛んでしまいました。それは、まるでミュージカルのような、心を打つメロディーの宝庫だったのです。一度聞いたらすぐ覚えてしまいそうなその平易な旋律は、控えめのハーモニーと、シンプルなカノンで彩られて、とても素直に耳に入ってくるものです。ソプラノソロの「アリア」も、そのままヒット・チューンとして使えそうなキャッチーな肌触り、これを歌っているマルティネスの張りのある声も素敵です。これで、合唱(女声合唱)の、ぶら下がり気味の音程と、主体性のない発声がなかったら、さぞかし素晴らしいものになっていたことでしょう。
これは1947年の作品ですが、1960年に作られた「死者のための追悼式」という作品からの抜粋を、最後に聴くことが出来ます。これも、曲自体のテイストは「ナオミ」と全く変わらないメロディアスなもの、特に、3曲目の「Shiviti」のしっとりとした味わいは、なかなかのものです。ただ、テキストがヘブライ語であるのと、ソロを担当するのがブルーベックの時にも登場したユダヤ教の司祭「カントール」ですから、ちょっとしたコブシの具合で、「ナオミ」とは全く異なった泥臭い印象が与えられるのが面白いところでしょう。
もう1曲、「シナゴーグの聖典礼」という、15の短い曲を集めたものがあります。バリトンとテノール独唱に合唱、オルガン伴奏という編成の、特にバリトンがなかなか雄弁に語る曲ですが、この合唱(「ナオミ」とは別の団体)がちょっとお粗末で、聴く気をそがれてしまったのは残念です。そもそも、オルガンとピッチが全然合っていないのですから。
このCDにはオルガン独奏の曲も収録されています。「我が祖父が書いた祈り」というタイトル通り、カステルヌオーヴォ=テデスコのお祖父さんが亡くなった時に遺品の中にあった楽譜に書かれていた祈りのメロディーを元に作られた曲です。ここからは、あくまでその素朴な「祈り」を生かすために全精力を傾けて編曲したであろう作曲家の「心」が痛いほど伝わってきます。そこにあるのは祖父への純粋な愛、これほど無防備に心をさらけ出せる作曲家がいたことを知って、ちょっと感動しているところです。
[PR]
by jurassic_oyaji | 2005-06-06 19:54 | 合唱 | Comments(0)