おやぢの部屋2
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Works for the Paetzold Contrabass Recorder
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Anna Petrini(Cb. Rec)
dB/dBCD143




もろ「ジャケ買い」のアルバムです。ブロンドのとても美しい女性が、なんだか木工品を口にくわえて目を向いている、という写真があまりにインパクトがあったものですから。
まず、この「木工品」は、「ペッツォルト・コントラバス・リコーダー」という、れっきとした「楽器」です。門外漢にはなじみのないものですが、すでにリコーダー、つまりブロックフレーテの関係者の間では、アンサンブルの低音用にしっかり認知されているもののようですね。日本では全音が輸入販売しているようで、こちらで見られるように、1本40万円ほどで買うことが出来るそうです。
ただ、これによく似た楽器の「パーツ」は、大昔からありました。それはパイプオルガンに使われている木管のパイプです。
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リコーダーもオルガンも、発音原理は同じです。この木管パイプを見たドイツのリコーダー製作者のヨアヒム・ペッツォルトという人は、甥のヘルベルト・ペッツォルトと一緒にこのオルガンのパイプをリコーダーに応用することを考え、1975年にこの「スクエア」型のF管コントラバス・リコーダーを開発したのです。でも、普通「リコーダー」といえば木材をくりぬいて作られるものですから、このように合板を張り合わせたものは、やっぱり「木工品」、ホームセンターで板を買って来て作った夏休みの宿題みたいにしか見えません。せめて、もっときちんと塗装を施したりすれば「楽器」らしく見えるものを。
もちろん、この「楽器」は普通のアンサンブルでも使われますが、現代の作曲者たちは、これをソロ楽器、あるいは、エレクトロニクスと組み合わせて用いることで、新たなサウンドを追求しています。
そんな「楽器」に魅せられたのが、この美しい1978年生まれのスウェーデンのリコーダー奏者、アンナ・ペトリーニです。それまで普通のリコーダーを演奏していた彼女は、現代音楽のシーンでこの楽器が演奏されているのを聴いて大きな衝撃を受けたそうです。そして、彼女自身も多くの作曲家に新しい作品を委嘱して、この楽器の可能性を演奏家としてさらに追及していくことになるのです。
今回、「dB(デシベル)」という、音の強さの単位を名前にしたいかにも音の良さそうなスウェーデンのレーベルから出た、彼女の初ソロアルバムがこれです。聴く前には手を拭いて(それは「オシボリ」)。いずれもこのペッツォルト・コントラバス・リコーダーを演奏しているもので、収録されている5曲のうちの3曲が、彼女によって委嘱された作品です。
あいにく、ここに登場する5人の作曲家の名前は、全く聞いたことのないものでした。しかし、それぞれにこの楽器に抱いているイメージが異なっているのが興味深いところです。つまり、それぞれの作品が、とても同じ楽器で演奏されているとは思えないほどに、そこで展開されている世界が完全に別のものになっているのですね。一つには、ここではこの楽器が「生」で演奏されていることがほとんどないために、楽器そのものの音がほとんどイメージできない、という事態があるからです。中には、ドミニク・カルスキ(1972年生まれ)の「Superb Imposition」のように、「生」で演奏することによって、この楽器のキータッチの打楽器的な効果を知らしめるものも有りますが、おそらく、この楽器の可能性は、アンプによって音を増幅したり、エレクトロニクスによってさまざまに変調することによってこそ、大きく開かれていくものなのでしょう。
マリン・バング(1974年生まれ)の「Spril Rudder」という作品では、楽器の中にマイクを挿入して、打楽器的な側面をさらに強調していますし、マティアス・ペテルソン(1972年生まれ)の「SinewOod」では、逆に小さなスピーカーを楽器の中に入れて、そこから流れるサイン・カーブの音源が演奏者のフィンガリングやブレスによって共鳴が変化する様子をコントロールしたりと、そこには、「木工品」ならではのアイディアが満載です。

CD Artwork © dB Productions
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by jurassic_oyaji | 2013-04-23 23:26 | 現代音楽 | Comments(0)