おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
Okihiko Sugano/Recording Collection
c0039487_23161747.jpg

Amadeus Webersikne(Org)
Janos Starker(Vc),
岩崎淑(Pf)
Auréle Nicolet(Fl),
小林道夫(Pf)
宮沢明子(Pf)
AUDIO MEISTER/XRCG-30025-8(XRCD)




菅野沖彦さんというのは、ほとんど「伝説」となっているレコーディング・エンジニアの名前です。あるいは、ちょっと前までは「オーディオ評論家」として広く知られていたのではないでしょうか。4枚組のXRCD、それにしても、作曲家や演奏家ではなく、一人のエンジニアの仕事のアンソロジーなんて前代未聞です。
c0039487_23202222.jpg

実は、菅野さんに関してはこんな本が、2007年に出版されています。ここでもご紹介した、クラシックの名録音を集めた本の著者、嶋護さんが作った、菅野さんのすべての録音のディスコグラフィーです。その中では菅野さんの録音の素晴らしさを実証するために、実際の「音」が付録のハイブリッドSACDに収録されています。音源はマスターテープから直接DSDにトランスファーされたもの、確かに、それを聴けばこのエンジニアが飛びぬけて優れた耳を持っていたことがはっきりとわかります。
この本が今回のXRCDを企画するうえで何らかの意味を持っていたことは明らかです。この中で「古今の無数にある録音の中でも最高峰のランクに属するもの」と持ち上げられている、シュタルケルのチェロ独奏による「パガニーニの主題による変奏曲」など、SACDのサンプルに含まれている曲が収録されているのですからね。マスタリングはもちろん「XRCDの産みの親」杉本一家さんですから、おそらく最高のものが提供されることでしょう。同じマスターテープから作られたXRCDSACDとの「真剣勝負」を、この耳で確かめることが出来るはずです。
まずは、シュタルケルが弾いたハンス・ボタームントというチェリストが作った「パガニーニ変奏曲」から聴き比べてみましょうか。驚いたことに、これは、チェロの音色自体が全く違っていました。良く聴いてみると、SACDではかなり目立って聴こえていたヒスノイズが、XRCDではずいぶん少なくなっています。杉本さんは、ノイズを軽減するような措置を取っているのでしょうか。正直、これは意外でした。こんなことをしてしまったら、菅野録音の肝心なものがなくなってしまいます。実際、ここでは演奏の勢い自体が全く変わったもののようになってしまっています。
もっと違いがはっきりしているのがウェーバージンケが演奏しているバッハの「オルゲルビュッヒライン」からの「O Mensch, bewein' dein' Sünde großBWV622です。XRCDでは、ペダルの低音がヘ音譜表の下の加線E♭以下の音が全然聴こえないのですよ。SACDでは、その3度下のCまで、これでもかというほど重低音が鳴り響いているというのに。これは、タイムコード01:5002:17付近ではっきり聴き分けられます。おそらく、これはマスタリング云々以前の問題で、使ったマスターテープが別物だったのでしょう。嶋さんの本にはそのあたりのコメントがあって、LPを作るときには製造上の理由でこの重低音はカットされていたというのですね。確かにこんな重低音は、普通のカートリッジではトレースできません。杉本さんが使ったのは、このLP用のマスターテープだったのでしょう。嶋さんは、その前のもの、録音の際に回っていた4チャンネルから2チャンネルにミックスダウンしたマスターを使ったのだそうです。
しかし、杉本さんともあろう人がこんなお粗末なことをやっていたなんて、ちょっと信じられない思いです。そもそも、XRCDにはマスタリングの日にち以外のデータは全く掲載されていませんでした。シュタルケルの場合も、嶋さんの本では「菅野さんが録音したものではない」と明言されているコダーイが収録されているのですから、この企画自体が相当いい加減なリサーチのもとに進められていたとしか思えません。
とても残念なことですが、菅野さんの録音の本質を聴きたいと思っている人は、こんなXRCDを買ってはいけません。ブックレットに嶋さんのインタビューが載っていますから、何も知らなければこれだけで信用してしまうのでしょう。極めて悪質です。

XRCD Artwork © Japan Traditional Culture Foundation
[PR]
by jurassic_oyaji | 2013-04-27 23:19 | Comments(0)