おやぢの部屋2
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RE:MAKE 1
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森恵
主婦の友社刊
(Album Book)
ISBN978-4-07-289087-5




1985年に広島で生まれ、高校時代よりストリート・シンガーとして活動、2005年にインディーズデビュー、2010年にAVEXのサブ・レーベルCUTTING EDGEからメジャー・デビューを果たした森恵の、初のカバーアルバムです。これを目にしたのは本屋さんの中にあるCDコーナー、出版社とレコード会社とのコラボレーションから生まれた「アルバム・ブック」という扱いですが、よくある普通の本のおまけにCDが付いている「CDブック」とは異なり、LP、つまり本来の意味での「アルバム」の大きさで作られたものです。「ブック」に相当するのは、LPサイズのブックレットということになります。
これを見れば、おそらく100人中100人が(@天野春子)この中には「12インチヴァイナル」が入っていると思うはずです。帯(実際は、帯を模した印刷)にもしっかり「LP盤」と書いてありますしね。でも、よく見るとその「盤」には「サイズ」というルビが入っています。しかも、ジャケットの隅にはCDのロゴも見られます。案の定、ポリエチレンの中袋に入っていたものは、直径12インチの丸い塩ビシートの真ん中に、爪で固定されたCDでした。これには大笑いです。見事に騙されてしまいましたよ。
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これは、そんな楽しい遊び心に包まれた「アルバム」でした。なんせジャケットの帯コピーの「ご唱和ください」というのにも、しっかり「ネタ」が込められているのですからね。ここで取り上げられているカバー曲は、一番古いものが1971年に作られた「風を集めて」、一番新しいものは1986年の「時には昔の話を」、つまり、すべて「昭和時代」の作品なのですよ。だから、「ご昭和ください」となるわけなのです。ここまで仕組まれたものだったら、LPと間違えてしまっても怒ったりするわけにはいきませんね(しょうは言ってもちょっと悔しい)。
全く初めて聴くアーティストだったので、なんの先入観もありませんでしたが、聴き進んでいくうちにこの人の素晴らしさに気づきます。ここで取り上げられている名曲たちは、オリジナルが偉大なだけに、これまでに多くの人によってカバーされてきたもの聴くたびに必ずと言っていいほど失望感を味わったものです。ところが、今回は、どの曲にも全く不満を感じることはありませんでした。もっと言えば、オリジナルすらも超えているのでは、と思えたものもありました。
そのように思えた最大のファクターは、彼女の「ことば」の美しさです。今の2030代のヴォーカリストで、彼女ほどきれいな日本語で歌える人などいないのでは、という気になるほどです。言いかえれば、他の人がいかに言葉を大切にしていないかということなのでしょう。例えば先ほどの松本隆/細野晴臣の「風を集めて」を、My Little Loverakkoがカバーした時などは、サビの「♪かぜをあつめて」という部分で、ありがちに「♪きゃぜをあつめて」と歌っているのを聴いて殆ど怒りに近いものをおぼえたものでしたが、森さんは決してそんな「汚れた」歌い方はしていませんでした。
山口百恵が歌った谷村新司の作品「いい日旅立ち」こそは、まさにカバーを超える名演でした。森さんは殆ど完コピに近いほどに、山口百恵の歌い方を再現しています。しかし、森さんが目指したものは単なるものまねではありません。スピーカーの前に浮かび上がったのは、山口百恵が作り上げ、かつて多くの人を魅了したこの曲の世界そのものでした。
逆の意味で荒井由美の「あの日にかえりたい」での完成度も素晴らしいものです。そこでは、オリジナルのシンガーの技量の拙さゆえに完全には伝わっていなかった作品の世界が、見事に広がっています。
そんな歌と、森さん自身のギターをはじめとするアコースティックな楽器によるサウンドは、とても柔らかく聴く者を包み込んでくれます。これだけの繊細な音だったら、マジでLPで聴きたくなってしまうのではないでしょうか。

Book Artwork © Shufunotomo Co., Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2013-05-07 20:41 | ポップス | Comments(0)