おやぢの部屋2
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VERDI/Requiem
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Montserrat Caballé(Sop), Bianca Berini(MS)
Plácido Domingo(Ten), Paul Plishka(Bas)
Zubin Mehta/
Musica Sacra Chorus(by Richard Westenburg)
New York Philharmonic
SONY/88765456722




SONYの「Originals」という、どこか別のレーベルで聴いたことのあるような名前のシリーズです。「別の」ほうでは、元のジャケットが斜めになってたりしましたが、こちらはまさに「オリジナル」のジャケットの完全復刻、このヴェルディの「レクイエム」では当然LP2枚組でしたから、そのダブルジャケットの表裏がしっかり再現されています。ただ、表には元の品番がそのまま印刷されていますが、裏ではこのCDの今の品番になっているというあたりが唯一の違いでしょうか。「AUDIOPHILE PRESSING」などと、LPならではのセールス・ポイントがそのまま見られるのもうれしいですね。
そして表側にはデカデカと「DIGITAL RECORDING」の文字、さらに裏側には「Recorded and edited using the 3M system.」と、録音機材まで明記されているのは、まさにこの時代ならではの現象です。つまり、これは1980年の10月にニューヨークのエイヴリー・フィッシャー・ホールでライブ録音されたものなのですが、この時期はまさに「デジタル録音」が華々しく幕開けを迎えていた頃だったのですね。これで稼ごうとしていたのでしょう(それは「ゼニトル録音」)。ここにある「3M System」とは、そんなデジタル録音の黎明期にそれまで「Scoch」というブランドで世界中の放送局や録音スタジオに録音テープを供給していた3Mが、突如発表したマルチトラックのデジタルのテープレコーダーのことです。ほどなくSONYの製品などが登場すると市場から姿を消してしまいますが、当時はこのようにメジャー・レーベルでも盛んに使われていた機材です。
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もちろん、この頃はデジタル録音と言えばまだ16bitのものしかありませんでしたし、サンプリング周波数も3Mの場合は50kHzでした。まだCDの規格が制定される前の話ですからね。いや、そもそもデジタル録音の「規格」などは各社まちまちの状態でしたから、この3Mで録音されたテープは、同じ3Mのレコーダーでしか再生できません。現在では、このレコーダーは、殆ど現存していないそうですから、もはやオリジナルのデータをそのまま再現させるのは極めて困難な状況になっています。同じように、初期のデジタル録音のデータは、たとえSONYのような汎用機であっても、現在は事実上メインテナンスなどは不可能ですので、録音スタジオでは苦労が絶えないことでしょう。デジタル録音は当時に比べたら格段の「進歩」を遂げていますが、その過程で切り捨てられてしまったものを救済するすべは、もはやなくなってしまっているのかもしれません。アナログ録音であれば、一部に特殊なものもありますが、ちゃんとした規格は確立されていましたから、半世紀前の録音でもまずきちんと(テープ自体の劣化はどうしようもありませんが)再生出来るというのに。
というわけで、ジャケットこそ間違いなく「オリジナル」ですが、音の方は到底「オリジナル」は期待できないCDであることは、容易に想像が付きます。
まず、最初の超ピアニシモの部分で、バックグラウンド・ノイズがかなり聴こえるのが気になります。ライブ録音ですからそれなりの会場ノイズは乗っているのでしょうが、それにしてもこれは異常、なんか連続してホワイト・ノイズのようなものも聴こえますから、もしかしたらテープ・ノイズなのかもしれません。
そして、本体の音楽が聴こえてくると、なんともチープな音には心底ガッカリさせられます。発売当時はあれほど持ちあげられていた初期の「デジタル録音」というものは、今聴くとこんなにひどい音だったのですね。潤いの全くない乾ききった音によって奏されるトゥッティなどは、広がりのない、SPレコードにも劣るほどのレンジの狭さのように聴こえます。
演奏そのものは、合唱もしっかりしていますし、メータの若々しい音楽も堪能できる素晴らしいものなのですがねえ。ドミンゴの声も、今とは全然違うりりしさ、でも、こんな平板な録音からは、その魅力は半分も伝わっては来ません。

CD Artwork © Sony Music Entertainment
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by jurassic_oyaji | 2013-05-11 23:12 | 合唱 | Comments(0)