おやぢの部屋2
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WAGNER/Das Rheingold
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Tomasz Konieczny(Wotan)
Christian Elsner(Loge)
Iris Vermillion(Fricka)
Marek Janowski/
Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin
PENTATONE/PTC 5186 406(hybrid SACD)




2010年から開始されたヤノフスキのワーグナー・ツィクルスの録音はこれが7巻目、ついに「リング」に突入です。ご存知のように、ヤノフスキの「リング」といえば、1980年から1983年にかけて世界で初めてデジタル録音によって制作されたものがありました。かつての東ドイツの国営企業Deutsche Schallplattenと西ドイツのEurodiscとの共同制作によるものですが、デジタル録音の機材は日本のDenon製のものが使われていたために、Denonも加えた3者の共同制作という言い方もされているようです。もちろん、日本国内では1982年の9月にDenonレーベルでLPが発売されましたね。その時の紹介ではヤノフスキは「現在最も注目を集めているポーランドの新進」となっていました。それは、当時彼が音楽監督を務めていたドレスデン州立歌劇場の歌手(もちろんオーケストラも)を起用した、完成度の高いレコードでした。テオ・アダムのヴォータン、ペーター・シュライアーのローゲ、そしてなんと、ラインの乙女のヴォークリンデなどという「端役」がルチア・ポップですからね。確かにデジタル録音が売り物ではありましたが、デジタルうんぬんよりはDeutsche Schallplattenならではの渋い音が、ショルティのDECCA盤とは対極的な魅力を誇っていたような気がします。
それから30年以上経って、「新進」は「リング」のみならず、ワーグナーのほぼ全作品を録音する「巨匠」になっていました。もちろん、録音はハイレゾPCMですから、Denon時代の16bitPCMよりはワンランク上の音も期待できるはずです。
ところが、前奏から、なんだかピリッとしない響きだったのには、ちょっとたじろいでしまいます。それこそ録音以前の問題、コントラバスの低いE♭の持続音に乗って、ファゴットが5度上のB♭の音を出すのですが、そのピッチがとてもいい加減なのですね。さらに、そのファゴットが、途中でブレスをしているのです。
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確かに楽譜ではところどころでタイが切れていますが(コントラバスも)、そもそもファゴットが何十小節もノンブレスで演奏することなどできるわけもありませんから、これはワーグナーなりの「配慮」だったのでしょう。ただ、聴きなれたDECCA盤や、そもそもヤノフスキの前の録音でも、ここはしっかり続けて演奏しているように聴こえます。要は、カンニング・ブレスや、もしかしたらテープの編集によってブレスを見えなくすることで出てくる緊張感が、ここでは完全に殺がれているのです。
「聴きなれない」感じは、その前奏のあとに出てくるラインの乙女のアンサンブルでも味わえてしまいました。下の2人の声が大きすぎて、肝心のソプラノのメロディ、つまり、ルチア・ポップのパートが全然聴こえてこないのですね。これは、ライブでのマイクアレンジの問題なのか、あるいは歌手の力量の問題なのかは、分かりません。
ただ、「歌手の力量」という点では、総じて前回の録音の方がはるかに優れていたのは明らか。今回は何ともキャラクターの特色がはっきりしない小粒の歌手になっているな、という印象は免れません。特にヴォータン役にはテオ・アダムのような重みはなく、何かずる賢いとうちゃんといった感じが付きまとっています。確かにヴォータンにはそのような要素もなくはないのですが、これほどそれがあからさまに出てくるのはちょっと違うのでは、という気がします。逆に、ローゲあたりはなんだかとても偉い人のような落着きよう、これも芸達者なシュライアーに比べると違和感満載です。
オーケストラの音も、確かに部分的な音色自体はハイレゾという感じがするものの、何か全体的に押し寄せてくる魅力がありません。例のシーンの合間のメタル系の「鳴り物」を総動員した音楽は、耳が痛くなるほどの大迫力、それでいて種類の違う楽器の個々の音までがはっきり識別できるというものすごい音ですが、「だからどうした」という感想しか持てないほど、見事にその部分だけが浮いています。

SACD Artwork © PentaTone Music b.v.
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by jurassic_oyaji | 2013-05-21 23:59 | オペラ | Comments(0)