おやぢの部屋2
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WAGNER/Der fliegende Holländer
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Dietrich Fischer-Dieskau(Holländer)
Marianne Schech(Senta), Gottlob Frick(Daland)
Sieglinde Wagner(Marie), Friz Wunderlich(Steuermann)
Franz Konwitschny/
Staatskapelle Berlin
BRILLIANT/94664




今まで幾度となく再発が繰り返されていた旧東ドイツのレーベル、「VEB Deutsche Schallplatten Berlin」原盤の「オランダ人」が、ついにBRILLIANTから発売されてしまいました。まとめ買いをすると、この2枚組の全曲盤が税込911円で買えてしまうのですから、まだ聴いたことがなければ手が伸びてしまうのは当然のことです。なにしろ、フィッシャー・ディースカウがオランダ人を歌っているというユニークなキャスティングですからね。
これが録音されたのは1960年、さっき書いたこのレーベルは、当時の東ドイツの唯一のレコード会社、つまり、国営企業でした。頭にある「VEB」というのが、そのことをあらわす「Volkseigener Betrieb(人民公社)」の略号ですね。つまり、企業の名前としてはその後の「Deutsche Schallplatten Berlin」ということになるわけで、多くの場合「Berlin」は省かれて単に「Deutsche Schallplatten」と呼ばれていて、それがレーベル名にもなっています。「ドイツ・レコード」ですね。そんな風に言う人は誰もいませんが(「このレコード、どいつんだ」「おらんだ」とか)。ところが、日本ではなぜか「VEB」がレーベル名だと思っている人が多いのですね。何か別の言葉の略号だと勘違いしているのでしょうが、これはとてもみっともないことです。
もちろん、現在はこの企業は存在していません。ここが保有していた音源は、基本的には「Berlin Classics」というところが引き継いでいるのでしょうが、こんな風に流れ流れてBRILLIANTからリリース、などというケースも出てくることになります。
そんな素性ですから、音はあまり期待できないのでは、と思って聴き始めたら、これが意外に素敵な音だったのにはちょっとびっくりしてしまいました。確かに、いい加減なマスタリングでオーケストラなどはちょっとキンキンした音になっていますが、これは最近の大レーベルのCDでもありがちなことで、もしきちんとしたマスタリングを施したSACDで聴けば、さぞ素晴らしい音なのだろうな、と思えるような音だったのですね。歌手の声などは、ヘタなCDよりずっと存在感が感じられますし。
実は、このレーベルは音に関しては昔から定評がありました。大昔ですが、わざわざ2トラサンパチのオープンリールにして販売されていたほどですから、かなりハイグレードのオーディオファイルの鑑賞にも耐えうるクオリティを持っていたわけです。その片鱗を、こんな格安なCDでも味わえるのは、とても幸せなことでした。
さらに、これはスタジオ(ベルリンのグリューネヴァルト教会)でのセッション録音で、音場設定などにもかなり配慮されていることも良く分かります。それこそ、同じ時代のカルショーのDECCA盤を彷彿させるような、人物の動きまでがきちんと分かるような録音ですから、嬉しくなってしまいます。
そして、なんと言ってもキャストが豪華。なんせ、ヴンダーリッヒが「舵とり」の役なのですからね。最初に出てくるモノローグは絶品、この役はここしか出番がないと思っていたのですが、最後の方にももう一声堪能できる場所があることを、初めて知ったぐらいの、ものすごい存在感です。同じテノールの役であるエリックが、なんとも情けなく聴こえてしまいます。
そして、フィッシャー・ディースカウの「オランダ人」の登場です。いやあ、これはものすごい「オランダ人」、おそらく、彼はこの役の「不気味さ」を出すために、あえて少し抑えた歌い方をしていたのでしょうが、それでもなおかつとてつもない感情のほとばしりが伝わってきます。往年の名ソプラノ、マリアンヌ・シェヒのゼンタが聴けるのもうれしいことです。
ベルリン・シュターツオーパーの合唱団は、ことさら荒っぽい歌い方を強調していますし、オーケストラの管楽器も今では聴けないような骨太の音色で力強く迫ります。それらはコンヴィチュニーの武骨な音楽と見事にマッチして、言いようのない迫力を放射しています。

CD Artwork © Brilliant Classics
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by jurassic_oyaji | 2013-05-25 22:44 | オペラ | Comments(0)