おやぢの部屋2
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ROUSE, IBERT/Flute Concertos
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Katherine Bryan(Fl)
Jac van Steen/
Royal Scottish National Orchestra
LINN/CKD 420(hybrid SACD)




このアルバムの本当のタイトルは、ジャケットにもあるように
、イギリスのフルーティストのキャスリン・ブライアンの名前が一番最初に来るものでした。実は、これは彼女にとっての2枚目のソロ・アルバムなのですが、2010年にリリースされた1枚目ではアーティスト名は目立ったものの、いともまっとうなタイトルの付け方でした。写真だってごく普通のあか抜けない女の子、という感じだったものが、今回はどぎついメークのモノクロ写真、ほとんどゴスの世界でごす。この3年の間に、いったい何があったのでしょう。
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1982年に生まれたキャスリンは、15歳の時にハーディング指揮のアカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズとニルセンの協奏曲を協演するほどの「天才少女」でした。奨学金を受けてアメリカのジュリアード音楽院に進み、ジーン・バックストレッサーやキャロル・ウィンセンスに師事します。2001年と2002年には、札幌の「PMF」にも参加しているそうです。そして、2003年には21歳という若さでロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団の首席奏者に就任します。それ以後は、このオーケストラでの活動のみならず、イギリス中のメジャー・オーケストラの客演首席奏者として大活躍しています。ということで、彼女は今年で31歳、「オトナ」を強調したくて、こんなルックスに挑戦しようと思ったのでしょうか。
このアルバムのメインは、クリストファー・ラウスという1949年生まれのアメリカの作曲家のフルート協奏曲です。1993年に、キャロル・ウィンセンスとデトロイト交響楽団のために作られたもので、翌年10月に初演されています。ウィンセンスのほかに、マリア・フェドトヴァやシャロン・ベザリーによる録音もありましたね。
ラウスがこの曲を作るにあたっては、1993年にリヴァプールで起きた、幼い子供が2人のティーンエイジャーにさらわれて殺されるという事件が念頭にあったそうです。全部で5つの部分から成るこの協奏曲の真ん中の部分の「Elegia」が、そのモチーフが最も反映された部分、深い悲しみが込められた曲想で、後半のやり場のない怒りをあらわしたような激しいクライマックスには、心を打たれます。ただ、この作曲家は、レッド・ツェッペリンから多大な影響を受けたそうで、そのようなロックに由来する語法もしっかり身につけているという幅広い作風が特徴なのだそうですから、もっと「明るい」音楽を用意することも忘れてはいません。それが、最初(1曲目)と最後(5曲目)の「Amhrán」という、ゲール語で「歌」を表わす名前が付けられた部分です。そこでは、ケルト音楽風の息の長いフレーズがフルートによってしっとりと歌われて、ほとんどヒーリング・ミュージックのような穏やかさが漂っています。そして、残りの、2曲目と4曲目がそれぞれ「Alla Marcia」と「Scherzo」という、リズミカルで華やかな部分です。ここでは、フルートはとても技巧的なパッセージを披露してくれます。
キャスリンのフルートは、とても伸びのある明るい音で、テクニックも何の不安もない滑らかさです。ただ、この作品の場合では1、3、5曲目のゆったりとした楽想での表現がやや一本調子なのが気になります。まだ作品の中に入りきれていないようなもどかしさが少し感じられるのですね。
その点、次のイベールの協奏曲の場合には、真ん中の「Andante」ではたっぷり歌いこんだ素晴らしい演奏を聴かせてくれていますから、おそらくラウスの時より相性が良かったのでしょう。まだ若いのですから、場数を踏んで苦手意識を払拭してほしいものです。
ここではドビュッシーの「シランクス」も演奏していますが、これもやや一本調子のような気がします。さらに、最後のロングトーンの途中にアクセントを付けているのは、使っている楽譜に問題があるせいなのでしょう。

SACD Artwork © Linn Records
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by jurassic_oyaji | 2013-06-02 19:59 | フルート | Comments(0)